Chapter 19-6
それから1時間後、アルムは屋敷の入り口のすぐ外にいた。呪術学の筆記試験を終え、次の試験のために移動したのだ。タア、ユリス、リズ、アリュードが一緒だ。そして目の前にはゼクトル。そう、最後である剣術学の試験だ。

ゼクトル「先に言っとく。これから試験をするけど、剣は使わねえ」
一同「…!?」

意外過ぎる一言に、誰もが耳を疑った。

タア「ふざけんなよ、剣術を習う科目だろーが!剣を使わずに何を使えっつーんだよ!?」
ユリス「そうですよ先生、これじゃ剣術学の試験にならないんじゃ…?」
アルム「あの…ぼくもそう思うんですけど…?」

一斉に抗議する生徒たちを、ゼクトルは両手を前にやって制止した。

ゼクトル「まあちょっと落ち着けってお前ら全員。別に俺はふざけてなんかいねえし、この試験の内容も他の4人と相談し合って決めたもんだ」
タア「…じゃあ何すんだよ?つーか何で剣を使わねぇんだ、理由を説明しろよ」

「ったく、口だけは相変わらず生意気なヤツだな」とため息混じりに呟き、ゼクトルはこう話した。

ゼクトル「あのな、剣を使って試験するったって、お前らは全員俺が出した指示を完璧にこなしてたじゃねえか。全員が完璧な出来なのに、実力を計る目的で試験をする意味なんざこれっぽっちもねえだろ?」
タア「………」
ユリス「それは…」
アルム「そうかも…」
ゼクトル「そうだろ?俺はお前らに聞きたいことがあるんだ」
リズ「聞きたいこと…?」

「そうだ」と、ゼクトルは真剣な表情で答えた。

ゼクトル「お前らは、何のために剣を練習してる?ただ自分が強くなりたいだけだ、なんて馬鹿な考えのヤツは、こん中にはいねえよな?…その理由を、1人ずつ俺に教えてくれ。それが試験だ」

5人の表情も、引き締まったものに変わる。試験の内容が剣を振り回す以上に大切なことを確かめるものであるということを、彼らはここで理解した。

ゼクトル「…じゃあ最初はアリュードだ、俺について来い。他の4人は、しばらくここで待ってろ。別に剣の練習したきゃやってて構わねえ」

ゼクトルはそう言ってアリュードを呼ぶと、屋敷の中に戻っていった。後から遅れて、アリュードも一緒に。
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