Chapter 19-4
セレイス「アルムはさ…」
ふとセレイスがそうこぼす。アルムは「はい?」と聞いた。すると彼はわずかばかり空を見上げて、こう聞き返した。
セレイス「この教習所での訓練が終わったら…どうするつもりだい?やっぱり、ベラヌールに帰るのかい?」
そんなことを聞かれるとは思っていなかったアルムは一瞬戸惑ったが、少し考えてこう返した。
アルム「ぼくは…家に帰るよりも、先にやるべきことがあると思います」
やるべきこと…それが何であるかは、セレイスには十二分に分かっていた。
セレイス「そっか…そうだよね…でも、僕たちが一生懸命探しても、見つからないんだよ…?」
アルム「見つかるか見つからないかじゃないと思うんです」
アルムは首を横に振って答えた。
アルム「ぼくが、ロエンを探したいんです。もちろん見つかった方がいいに決まってるけど…それでも、いないのをほったらかしにして、家でゆっくりすることなんてぼくは出来ないです」
セレイスはそれを聞くや、ふっと息をついた。
―――やっぱり、僕と同じだ、と。
セレイス「…そう、ありがとう。ごめんね、変なこと聞いちゃって」
アルム「いや…別にいいですけど…どうしたんですか?」
セレイス「ちょっとね…。僕も今と似たような状況を過去に味わってるから…」
そう語るセレイスの目は、どこか悲しげに見えた。それを見て、(絶対にロエンを見つけないと…)と力強く思ったアルムであった。
◇◇◇
タアたちのグループに続いて、アンナ、アリュード、ユリス、リズの4人のグループも試験を終え、次は呪術学の試験を行うと言われた彼らは、全員で試験が行われる部屋に向かっていた。室内なので、さっきのように戦うことは無いだろうが、セリス曰く「嫌な予感がする」らしい。それが何を意味するのかは、まだこの時アルムには分からなかった。