Chapter 19-2
しばらくにらみ合いが続く。その時、アルムがみんなに声をかけた。
アルム「みんな、相手は分かってる!全力でぶつかろう!」
その言葉に、3人も頷く。そして、4人全員が動き出した。
アーロン(第1段階は正しい判断だな…)
向かってくる4人に対し、アーロンはそう考えた。
最初に攻撃を繰り出したのは、素早さが一番高いセリスである。小回りの利く短剣を手に、素早くアーロンの懐を狙う。しかしアーロンも簡単には通さない。全ての攻撃を片手で防ぐ。
レイシア「…はあああっ!!」
そこにレイシアが入ってくる。彼女も相当素早い。鋭い突きがアーロンを狙う。だがこれも空振りに終わる。アーロンは大きく後ろに跳び、2人の攻撃を避けて構え直したのだ。それを見て、アーロンに向かっていこうとしていたアルムとルーナも立ち止まった。
セリス「くそっ、通らねー!」
レイシア「さすがに…手強いわね…」
アーロン「さて…今度はこちらから行かせてもらおう」
アーロンは表情を変えずに剣を横に振った。その直後、4人の体に鋭い痛みが走った。
セリス「痛っ…!」
ルーナ「血が出てる…」
レイシア「離れていたのに…?」
アルム「いや、これはそういう技なんだ…遠くからでも攻撃できる」
アーロン「その通りだ…では次は近くから行くぞ」
アーロンがそう言った瞬間、その姿が消えた。
ルーナ「…消えた!」
アルム「いや、どこかにいる…!」
アルムは注意深く辺りを見回す。しかしその時、背後からアーロンの声が聞こえた。
アーロン「…遅い」
アルム「!!!」
ドカッ、という音がして、アルムが弾き飛ばされる。しかし、彼はあることをしていた。
アーロン「ぐっ…いつの間にベギラマを…!」
アーロンに、背後に回られた瞬間、アルムは後ろに向かってベギラマを放ったのだった。初めてアーロンにダメージを与えた。これによって、セリスたちも俄然勢いづいた。
セリス「よっしゃ、行くぜ!」
まだ炎が消えない中に飛び込み、アーロンに瞬速の攻撃を加える。ソニックブレイクは、シェルトとの秘密訓練でマスターしている。
さらに攻撃は続く。続いてレイシアが広範囲に岩石落としを繰り出す。ボコッ、と、人に当たる音が聞こえた。
アーロン「くっ…!」
アーロンは剣を一閃し、視界を遮る炎を消す。だがそこには、鞭を構えたルーナが立っていた。
ルーナ「いくよー、双竜打ち!!」
バチン、バチンと2連続で強烈な鞭が飛ぶ。そして最後に、アルムが高く上げた右手をアーロンに向かって振り下ろした。
アルム「…ライデイン!!」
空から放たれた稲妻が、アーロンに襲いかかる。アーロン自身、この時初めてライデインを浴びた。
アーロン「…はぁ、はぁ、はぁ…!」
立て続けに四人の技を受けて、アーロンの体力は一気に削られていた。
アーロン「お前たちを…少し甘く見過ぎていたようだな…。いい攻撃だった、よく1年間でここまで成長したものだ…」
めったに聞けないアーロンの誉め言葉に、4人は少し照れくさそうに笑った。
アーロン「問題はない、戦術学の試験はこれで終わりだ。ただ…お前たち4人には、さらなる高みを目指して欲しくなった。もしお前たちにその気があるのなら、明日の昼にでも声をかけてくれ」
その言葉に、4人はゴクリと唾を飲み込んだ。何か、今まで踏み込めなかった領域に踏み込むような、そんな感じがした。