Chapter 17-14
アーロン「ルプガナまではあと少しだ…行くぞ」
ゼクトル「ラストが近づいてる時こそ、気入れて行かねえと足すくわれっぞ!」
レイシア「あの…先生…」
2人の先生が気を入れている所に、レイシアが小さな声で話しかける。おかげで彼らのテンションはやや下がってしまった。
ゼクトル「何だよ、俺らが気合い入れたってのに…」
レイシア「もう少し…待ってくれると、ありがたいんですけど…っ」
途切れ途切れに聞こえる声の方を向くと、レイシアが下を向いている。どうやらかなり気分が悪いらしい。
アルム「レイシア…大丈夫?」
アーロン「旅の扉で酔ってしまったか…仕方がない、少し休憩しよう」
タア「何だよ、あとちょっとなんだろ?行っちまえばいいじゃねぇか!」
ゼクトル「じゃあ1つ聞くぜ。お前が吐きそうなほど気分が悪い時に、他の奴らに早足で行かれたらどうだ?」
タア「…フン、無理矢理ついて行くに決まってんだろ?」
ゼクトル「本当に…そう言えるんだな?」
タア「っ…」
妙に気のこもったゼクトルの声に、タアは何も言い返せずに「わーったよ、休憩すりゃいいんだろうが」と退いた。
レイシア「みんな…ごめんなさい…私のせいで…」
アルム「気にしないでよ、無理して大怪我するよりずっといいからさ。ね、セイファー、レイズ?」
セイファー「そうだね、体は大切にしなきゃ!」
レイズ「そうだよ…(もう僕みたいに自分を犠牲にする人は見たくないしね…)」
レイシア「…ありがとう…」
そうやって話をするうちに、レイシアの顔色も幾分か良くなってきたようだった。
アーロン「エフェルト、ルプガナまで自力で行けそうか?」
レイシア「…はい、もう少し休んだら治ると思います」
アーロン「分かった。ではもう少し後に出発するとし…」
レイズ「先生、危ない!!」
アーロンが言いかけた時、レイズが大きな声で叫んだ。彼の背後の森から何かが駆けてくる音が聞こえた。それは頭に角を持った、ヘルポーンの群れだった。そしてアーロンが振り向いた時、いくら彼と言えども、剣を抜き放つ時間は無かった―――。