Chapter 17-10
宿屋の一室の中で、アンナとアリュード、そしてレイズの3人は何気ない話で盛り上がっていた。
アンナ「へぇー、ずいぶん上手い絵じゃないか!これ、あんたが描いたのかい?」
アリュード「ありがとう。うん、僕が描いたやつだよ。ここに来てから…」
アンナ「でも人魚なんて空想の生き物、よく描けるねぇ…」
アリュード「うん、まあ小さい頃読んだ絵本とかによく載ってたからね。後は2つをくっつけた感じになったけど」
レイズ「でも上手いなぁ…僕は絵なんてまるっきり描けないのに…」
アリュードの描いた人魚の絵について話していた時、部屋の扉が叩かれた。
アンナ「?…はい、どちら様?」
アルム「アンナ、アリュード!ぼくだよ、入っていい?」
アンナ・アリュード「アルム!?」
勢い良く扉が開かれる。そのあまりの勢いに、外で待っていたアルムは危うく跳ね飛ばされそうになった。
アルム「うわっ!びっくりした…」
アンナ「ああ、ごめん!嬉しくって、つい舞い上がっちゃったんだよ!」
アリュード「アルムも無事だったんだね、良かったよ!」
続いて来たレイシアとタア、そして3人の先生に、2人は更に喜んだ。レイシアはアルム同様無事の再会に安堵した様子だったが、タアは眉一つ動かすことはなかった。それでも、この2人を助けることが出来て、どこかほっとしたような仕草は所々に滲み出ていた。
◇◇◇
この日はひとまず全員ベラヌールで一夜を明かすことにした。合計10人が泊まる宿屋は、3部屋が取られ、アルムはセイファー、レイシア、シェルトの3人と同じ部屋になった。万が一を考え、安全のために各部屋1人ずつ先生が入っている。
シェルト「それにしても、今日は疲れましたね、皆さん?」
アルム「そうですね、ぼく、足がパンパンですよ」
レイシア「私も、今日の山道は辛かったです…もう行きたくないわ…」
珍しく愚痴を漏らすレイシア。
セイファー「みんな大変だったんだね…ここまで来るのに」
アルム「うん、ぼくがここで薬草とかと一緒にキメラの翼を買っといたんだけど、知らない間に無くなっちゃって。誰かに盗られたか、落としてはなかったと思うんだけど…」
レイシア「その後の山道といい、船といい…災難だったわね」
シェルト「全くですね。まあしかし…私たちもとうとう何者かに狙われ始めているようですし、今後も行動には十分注意しなければなりませんね…」
シェルトの重みを含んだ言葉に、アルムとレイシアは「はい」と返事をした。