Chapter 17-3
アルム(だけど…ここで引いたら格好悪いし…そうだ、もしもの時に、あれが…)
アルムは懐を探り、あるものを取り出そうとした。が、ここで異変に気付く。
アルム「…ない!?」
レイシア「…どうかした、アルム?」
アルム「ベラヌールで買っておいた、キメラの翼2枚が…なくなってるんだ」
そう、アルムはあの時、確かに薬草や聖水と一緒にキメラの翼を買ったはずだった。すぐ懐にしまい込んだのもしっかり覚えている。よくよく探ってみると、キメラの翼だけではなく、他の道具も無くなっていた。
タア「んなもんいらねぇだろうが、歩いて行くっつってんだからよ」
ぶっきらぼうにタアが言う。レイシアは「ちょっと、絶対に役に立たないとは限らないじゃない!」とアルムの味方をしたが、アーロンが唐突に口を開いた。
アーロン「無い物は仕方がないだろう。2時間後に来る船に遅れると、面倒なことになる。諦めて出発した方がいい」
レイシア「先生まで…!」
アルム「いいんだ、レイシア。さっ、頑張って帰ろう!」
「だけど…」と腑に落ちない表情のレイシアの背を押して、アルムは「ありがとう」と笑った。
◇◇◇
出発しておよそ1時間、彼らは狭く曲がりくねった山道を歩くのに難儀していた。
タア「ちっ…うっとうしい道作りやがって…」
ゼクトル「古代人に愚痴ってどうすんだ、ほら、さっさと抜けちまうぞ」
タア「…分かってるよ、くそっ…」
一番体力のあるタアがこれほどぼやいているだけに、アルムとレイシアはそれ以上に疲労していた。
アルム「…はぁ、はぁ…」
レイシア「アルム…あとちょっとだから…頑張りましょ…」
起伏も激しく、足場も良くない岬への一本道。息も絶え絶えになりながら、歩き続けたその先に、ついに海が見えてきた。
アルム「やっと…着い…た…」
船に乗ったらひとまず休もうと、アルムはもう見えている岬に向かって歩いて行った。