Chapter 15-5
ベラヌールから北に位置する、渡し舟が着く場所。セリスはルーナとともに、嵐の中をここまでたどり着いている。またアルムは、ベラヌールに住んでいた時に何度か訪れたことがある。さらに、アルムは「こちら側」の渡し屋とは面識もある。舟を借りるのは造作もないことだと思われた。しかし、それは大きな誤算だった。

アルム「もう…渡す舟がない…?」
*「そうなんだよ、昨日の嵐でほとんど持って行かれちゃってね…。残った何艘かも、客が来てもう出しちゃったんだよ。悪いね…あんたらの力になれずに」
セリス「あちゃー、昨日の嵐とレイシアたちに先行かれてることを考えてなかったぜ…どうするよアルム?」

セリスは参った、というように息をついたが、アルムには考えがあった。

アルム「…ルプガナから、船でいろんな所に行けないかな?」
セリス「ルプガナ?…そうか、あそこからならいろんな場所に船が出てるっけな…」

そう、ルプガナはいまやこの世界最大の港町。船は世界中に物や人を運んでいる。

アルム「うん、さっきキメラの翼も買ったし、ルプガナにはすぐに行けるはず…あっ!」
セリス「…そうだぜ?お前がなんでキメラの翼なんか買うのか、後ろで不思議に思ってたけど…お前忘れてたのか…?」
アルム「そうだった…。すっかり忘れてたよ…」

落胆するアルム。一体何のことかというと、話は実習開始時まで遡るのだが―――アーロンは最後の最後に、こんな言葉を付け加えていたのだ。

アーロン『公正を期すために、キメラの翼やルーラなどの目的地への瞬間移動手段を用いることを禁止する』

アルムはこの言葉をすっかり忘れていたのだ。久々の実習で、少し舞い上がりすぎていたのかも知れない。

が、こうなれば移動手段が無くなってしまったという問題に直面する。定期船は昨日出航しているので、2日後まで来ない。刻限には間に合わないだろう。そして他にこの大陸と別の大陸を行き来する乗り物はここの渡し舟と、ベラヌール西海岸の桟橋に来る物質輸送船だけ。もちろん後者には一般人は乗れない。

セリス「…いや、諦めんのはまだ早いぜ、アルム…」

セリスは熟考した後、ゆっくり口を開いてそう言った。

アルム「他に…何か方法があるの?」
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -