Chapter 14-12
アルム「うわぁぁっ!!」
ルーナ「きゃーっ!!」
荒れ狂う水の流れによって、見る間に下流に流されていく。濁流は簡素な造りの小舟に襲いかかってくる。4人が乗っているこの状態で、いつまで保つかは分からない。懸命に櫂を動かし、どうにかこうにか対岸に着こうとする。
すると、ここでレイシアの目があるものを捉えた。
レイシア「…いたわ!あそこ!!」
彼女が指差した先には、自分たちと同じく舟で向こう岸を目指しているユリスとリズの姿があった。ようやく追いついた、と、レイシアは櫂を漕ぐ速度を上げる。まさにその時だった。
ユリス「…きゃ…!!」
リズ「……あっ…!!」
微かに聞こえた2人の悲鳴。ついに、彼女たちの乗る舟が濁流に飲み込まれてしまった。
アルム・レイシア「いけない!!」
そう叫んだ時には、2人は既に舟から身を投げ出していた。ドボーンという音を上げて、2人の体が水の中に消える。
セリス「あいつらっ…!大丈夫なのかよ!!」
ルーナ「セリス…どうするの…っ…?」
ルーナの声は震えていた。目の前の状況を見れば当然である。セリスはそんなルーナを見て、1つ深呼吸をした。
セリス「とにかく、俺たちは向こう岸に渡ろう。あいつらなら大丈夫だ。ここにアルムの剣やらもあるし…頑張ってくれ、ルーナ」
ルーナ「う…うん、分かった…」
セリスから櫂を渡され、懸命に漕ぎ始めるルーナ。セリスと共に、対岸を目指して舟を進めた。
◇◇◇
濁流に身を投げた2人。そのまま泳いでユリスたちの元に向かおうとするが、水の流れは思った以上に強かった。
レイシア「ダメだわ、流されちゃう…!アルム、ユリスをお願い!」
アルム「わかったっ…!」
懸命にユリスの元に泳いでいくアルム。彼女を見失わないように泳いでいき、やっと追いついた時には西の海にまで流されていた。が、今心配すべきことはユリスの無事だ。
アルム「ユリス!!」
ユリス「ア…ルム…!」
アルム「大丈夫?向こうまで泳げる…?」
ユリス「大丈夫だと思う…ありがとう…」
アルムが来たことで、ユリスは冷静さを取り戻したようだった。2人は流れに逆らって、遠く離れた陸地を目指し泳ぎ始めた。