Chapter 14-11
が、天は完全に彼らの味方ではなかったようで、しばらくすると。
ポツッ
ルーナ「ん…雨…?」
頭上から小さい何かが落ちてきた。紛れもなく、それは曇り空が降らせ始めた雨だった。
レイシア「誤算ね…雲行きを読んでなかったわ…」
徐々に降り始める雨を受け、空を見上げるレイシア。が、そうは言っても、もうドラゴンの角を越えてしまっている。ここから引き返すには、少し遠すぎる。このままベラヌールに向かう方が得策に思われた。しかし、彼らが歩を進めるごとに、雨足は強さを増してきている。
セリス「…おい、大雨でも渡し舟はやってくれんのかよ?」
アルム「…分からない、急いだ方がいいかな?」
レイシア「そうね、この雨の中で立ち往生するのだけは避けたいけれど…走りましょ!」
4人は一斉に走り出した。が、その間に雨はとうとう強さを増し、半ば砂漠となっているこの一帯の地面に過剰な潤いを与えた。彼らが船着き場に着いた頃には、河は全てを押し流さんばかりの濁流に変貌していた。これでは舟を出すどころの騒ぎではない。
ところが、なんと案内の男は数分前に来た2人に、舟を出してしまったのだという。誰かは容易に想像がついた。
アルム「それ…絶対ユリスたちだよ!」
セリス「おいおい、相当危ないんじゃねーのか?」
ルーナ「こんな所で溺れたら、死んじゃうよね…?」
2人の安否が心配になるアルムたち。と、ここでレイシアが驚くべき言葉を放った。
レイシア「…私たちも行きましょ!2人を追いかけて見つけないと!」
セリス「はぁ!?お前、気は確かか!?」
レイシア「大真面目よ!!早く、時間が無いわ!」
レイシアの気迫に圧倒されたのか、セリスは押し黙り、男は「どうなっても知らんぞ…」と呟きながらも舟を出してくれた。
レイシア「行くわよ!みんな、しっかり漕いでよ!」
レイシアが声を上げる。4人は自然の脅威という、思わぬ敵と闘うことになった。