Chapter 14-8
フェアル「命に別状は無いみたい。心配しないで」
医務室に運ばれたアンナは、すぐに手当てを施された。頭からの出血は倒れた時の窓の破片によるもので、現実にひどかったのは背中の傷だった。が、それもさほど深くはなかったようだった。
アリュード「同じ部屋だったのに…なんで気づいてあげられなかったんだ…!」
ロエン「僕だって…あれを見ることしかできなかったよ…!」
そう2人が自責していたのを、アルムは離れて聞いていた。
実はロエンが、アンナを襲ったものを目撃していた。寝起きだったので特定は出来ないが、ガーゴイル系統のモンスターだったと言うことだった。事実、意識を取り戻した後にアンナが口にした「剣で斬られた」という証言と、町人が屋敷の窓を破る魔物の姿を目撃していた証拠が揃っていたので、ひとまずアーロンらが魔物の襲撃には十分注意することを生徒たちに言い聞かせ、アンナも程なくして回復したのでこの騒ぎは静まった。
この騒ぎの中で役立ったのは、「人との繋がり」だった。アンナの負傷から先生にそれが伝わるまで、実に短い時間だったのだ。
◇◇◇
ユリス「…わたしたちも、もっとみんなに近づいた方がいいんじゃないかしら…?」
割と質素な部屋の中で槍の手入れをしながら、ユリスはリズにそう言った。が、リズは黙りこくったまま、何か嫌な物を思い出したかのように目を伏せていた。
ユリス「リズ…どうかした?」
リズ「別に…何も…」
ユリス「嘘。今絶対考えごとしてた」
リズ「………」
また黙ってしまう。これでは数ヶ月に渡るいたちごっこに終止符が打てない。
ユリス「ねえ…わたしじゃ…頼りにならない…?」
リズ「………」
一瞬、リズの目が少し開かれた。その金と赤の両眼から少しも自らの目を逸らさず、ユリスはリズにこう言った。
ユリス「わたしで良かったら、リズが悩んでること、聞くよ…?」
リズ「えっ…?」
ユリス「だって…わたしたち、仲間…でしょ?」
リズ「私が…仲間?」
ユリス「そう。一緒に頑張って…一緒に過ごして…わたしはリズのこと、仲間だって思ってる」
リズはユリスの目を見返した。その目に、嘘の色は一切見つけられなかった。