Chapter 14-7
アルム「ん…」
窓から差す朝日の光で、今日もアルムは目を覚ます。と、ここでアルムはあることに気がついた。
アルム「…あれ…レイシア?」
アルムの横で眠っているはずの、レイシアの姿が見当たらない。台所に目をやるが、やはり彼女はいない。隣のルーナと、その向こうのセリスはまだ眠っている。ふと時計を見ると、いつもより数十分早く目が覚めたようだったので、2人を起こさずに、アルムはそっと部屋を出た。
すると部屋の中の静けさから一転、外は喧騒に包まれていた。廊下を渡って聞こえてくる物音。困惑してその場で立ち止まっていると、シェルトがそこを通りかかった。
アルム「あ、先生…おはようございます」
シェルト「おはようございます。…レンバートくんも、来た方が良いでしょうかね」
アルム「えっ?」
シェルト「こちらです。ついて来て下さい」
シェルトは早足で騒ぎの方へと向かう。元々長身で歩幅の広いシェルトの早歩きに、歩行でついていくのは至難の業だった。仕方なしに、アルムは小走りでその後を追った。
騒ぎの正体が、少しずつ割れてきた。ロエンたちの部屋の前に、人だかりが出来ている。ちょうどそこにレイシアもいた。
レイシア「あっ、アルム!起きたのね」
アルム「起きたけど、一体何の騒ぎなの!?」
レイシア「それなのよ。アンナが、誰かに襲われたみたいなの」
アルム「えぇっ!?」
それを聞くや否や、アルムはロエンの部屋の中を覗き込んだ。すると、シェルトがアンナに回復呪文をかけているのが見えた。そしてその床―――ちょうど彼女の頭の下に見える大きな赤い染みは、紛れもなく襲われた時に流れて残った血であり、流れた血は彼女の髪の一部分を真っ赤に染めていた。