Chapter 14-6
アルム「アーロン先生って…やっぱりすごいんですね」
ゼクトル「ああ…すげえよ。アイツが言ってた通り、誰よりも努力家だしな…」
アルム「…アイツ、って誰ですか?」
今回出てきた「アイツ」が、アーロンを指す代名詞ではないことに気づいたアルムはそう聞いた。が、ゼクトルは「こっちの話だ。気にすんな」と言うだけだった。しばらくすると、ゼクトルは足を止めてアルムにこう言った。
ゼクトル「今日、エアスラッシュができようとできまいと、今日で個人的な指導は終わりだ。先に言っとくぞ」
アルム「えっ…?」
ゼクトル「前にも言ったけど、こっから先は人に教えれるような技じゃねえんだよ。人のを真似るか自分で作るか、2つに1つ。それがここから先の道ってことだ」
ゼクトルはそう言って歩き出す。アルムはその背中を追って同じように歩き出した。
◇◇◇
レイシア「へぇー、あのユリスがね…。前々からよく2人でいるところは見てたんだけど…そういうことだったのね…」
ユリスが秘密訓練をしていたことをレイシアに話すと、彼女はやや驚きつつも考えれば分かる、といったように言った。ちなみにこの日、アルムはエアスラッシュを成功させることは出来なかった。
レイシア「どっちにせよ、あなたはあなたなりに頑張ればいいのよ。人の努力を気にすることはないわ。それに焦って、無理して体壊したりしたら元も子もないからね…私みたいに」
アルム「レイシア…?」
レイシア「そういうこと。分かった?」
アルム「うっ、うん…」
レイシアのアドバイスに、アルムは素直に頷いた。むしろ努力しているのは自分だけではないことがはっきり分かって、アルムはますますやる気が出てきた。無理をするという意味ではなく、だ。
そうして、アルムは翌日からの訓練を今まで以上に楽しみにして眠りに就いたのだが、その夜に思いがけない事件が起ころうとは、アルムを含めて誰も予想していなかった。