Chapter 14-5
屋敷の外壁に沿うように歩き、角でちらりと顔を出して覗き見る。すると、2人は庭の真ん中で立ち止まり、向かい合っていた。
アルム(えっ…槍?)
アルムは一瞬訳が分からなくなった。ユリスは分かるとして、アーロンがなぜ槍を構えているのか。アーロンは剣の使い手ではなかったか。アルムはそう考えたが、それ以前になぜ2人が武器を向け合っているのかも、この時はまだアルムには分からなかった。
そうして見ていると、2人は同時に動いた。が、アーロンは攻撃をしない。ユリスの攻めをしっかりと槍で受けている。
アルム(手合わせじゃなくて…ひょっとして…特訓?)
アルムの推測は正しかった。一通り攻防を終えた2人が、話を始めた。
アーロン「随分といい動きになった。この半年でよくここまで成長したものだ」
ユリス「…ありがとうございます」
アーロン「まあ…槍を扱って2年半の私が相手では、出来ることも出来なかっただろうな…すまなかった」
ユリス「そんなこと…ないです。今まで、ありがとうございました」
ユリスが頭を下げ、こちらに振り向いた。アルムはさっと身を引き、来ていた道を引き返す。どうやらユリスは気付かなかったようで、アルムを追いかけてくることはなかった。
◇◇◇
昼食を終えて、ゼクトルとの個人指導のために庭へ行く途中。
アルム「(半年って言ってた…ってことは…)ぼくよりずっと前から、ユリスは特訓してたってこと…?」
ゼクトル「そうらしいな…」
思いがけない人物から独り言に対する答えを返されたアルムは、思わずばっと振り向いた。
アルム「せ…先生…」
ゼクトル「遅かったから来ちまった。そうだな、ユリスが槍の使い手だって聞いた時、アイツは安心してたぜ。なんせ生徒の中に剣以外の使い手がいることを想定して、槍やら杖やら…斧まで使ってたからな。全く器用なヤツだぜ、アイツは」
それを聞いた時、アルムは確信した。アーロンはやはり、ただのソードマスターでも切れ者でもない、ということが。