Chapter 14-1
それから2日が経ち、レイシアの体調も無事に戻った。「迷惑かけてごめんなさい」と、彼女はアルムたちに謝った。当然彼らが気にするはずもなく、「気にしないで」と笑って返したのだった。
この朝アルムは真っ先に目を覚ました。そして、そのまま台所に向かう。あれ以来、アルムはたまに料理を作っているのだ。それがまんざら悪くもない出来なので、レイシアもアルムに料理を許可している。…こんな言い方をしては、ルーナが可哀想ではあるのだが。
料理が進むと、香りが立ち上る。それに気がつき、レイシアが目を覚ます。
レイシア「うーん…、アルム、おはよ」
アルム「あっ、レイシア、おはよう。待ってて、もうちょっとで出来るから」
レイシア「ん、ありがと」
しばらく料理の音が響く。するとレイシアが、ぼんやりした口調で言った。
レイシア「…私、心のどこかで気が緩んでたのかも」
アルム「えっ?」
レイシア「ロエンに負けちゃった途端に、体がだるくなったの。ただの自分の力不足を言い訳にするなんて…私ってまだまだ弱いよね」
アルム「そんなことないよ!」
アルムが強く否定したので、レイシアはアルムの顔を見た。
アルム「レイシアは強いよ。ぼくなんかより、ずっとずっと強い。戦いだけじゃなくて、心も。心が強くなかったら、ずっと前みたいに…1人で危ないことをしたりできないよ」
言葉を探しながらアルムは言う。取って付けたようなその言葉だったが、レイシアの心には十分響いていた。
レイシア「…ありがとね。私の取り柄は元気さじゃなきゃ!さっ、2人を起こさなきゃね!」
笑顔でそう言って、セリスを軽く蹴り、ルーナの体を揺すって2人を起こした。もうこの起こされ方に慣れてしまったのか、何一つ言わず普通に起きるセリスを見て、アルムは思わず吹き出した。