Chapter 10-13
布団の中でうずくまったまま、ノイルは動かない。その時、部屋のドアがコンコン、と叩かれた。
ノイル「…誰!?」
ノイルは若干上ずった声で聞いた。が、「アルムだけど…入っていい?前にここに来た時に、忘れ物しちゃってさ…」という声を聞き、ノイルは少し残念そうにしてドアを開けた。
ノイル「…何を忘れたの?」
アルム「取れてた服のボタンだよ。ほら、これこれ」
アルムはノイルの横にある机の下にあったボタンを拾い上げ、ノイルに見せた。実はこれは、アルムの作戦だった。ノイルに半ば追い出されかけたあの時、後々部屋に入る口実を作るために、アルムは気付かれないようにボタンを残していったのだった。それに気付かず、ノイルはアルムを部屋に入れた。アルムにとって、残された作業は「仕上げ」のみ。
アルム「ぼくの探し物は見つかったけど…きみの探し物は見つかってないんじゃないかな?」
ノイル「えっ…?」
アルム「ルージャ、この部屋に戻りたがってたみたいだけど…入れてあげたら?」
ノイル「それはイヤだ!あいつが悪いんだ、入れたくないよ!」
一瞬の沈黙。
アルム「…そう、分かった。じゃあ、ルージャが部屋に入らなければいいんだね」
ノイル「え?何が…?」
アルム「ちょっと来て?」
アルムはノイルの手を取り、部屋の入り口に導いた。
ノイル「ち、ちょっとやめてよ!何がしたいの?」
アルム「ルージャが入れないなら、きみが出るしかないからね」
訳が分からない。アルムの言うことは分かるが、この行動が謎だ。アルムが何を考えているのか、ノイルには全く分からなかった。しかし、角を曲がったところで、ノイルはその意味が分かった。ルージャがそこで、何かを持って立っていたからだ。
アルム「ルージャがきみに、渡したいものがあるんだって。受け取るだけでもしてくれないかな」
そう言うと、「じゃあぼくは帰るね。ノイル、ありがとう」と言い残し、アルムはその場を去った。突然のことに、ノイルの思考は停止していた。目の前に喧嘩相手がいるのに、言葉が何も出てこずに、2人きりの気まずい空気が続く。すると、ルージャが先に口を開いた。