Chapter 10-7
セレイス「…どうしたの?もしかして、昨日のことかな?」
訓練が終わり、皆次の訓練の準備に向かう。といっても、ただ訓練場所に向かえば良いので、時間の心配はない。ルーナに「先に行ってて」と告げ、今はアルムとセレイスの2人だけ。
セレイスの先の問いに、アルムは小さくこくりと頷いた。
アルム「先生になら…何でも話せる気がするんです」
アルムの言葉を聞いたセレイスは、微笑んで返した。
セレイス「…そう、それは嬉しいね。心配はいらないよ、誰にも言わないからね」
アルムは自分を信じて打ち明けてようとしてくれているのに、自分がそれを他人に告げては何の意味もない。アルムは再び控えめに頷いて、スラリン失踪事件の一部始終を話した。ドラゴンの角のこと、影で何者かが糸を引いていたこと、魔物をあちこちから集めているようだったこと、そして―――セイファーとレイズのこと。知っている限りの全てを、アルムはセレイスに話した。
セレイスは黙って話を聞いていたが、ふと時計に目をやり、こう返した。
セレイス「なるほど。色々なことがあったんだね。この話は、夜に時間をとってゆっくりしたいんだ。今日の夜8時にこの場所で…いいかな?」
アルム「あっ、はい。大丈夫です」
セレイス「うん。じゃあ待ってるよ。それじゃ、次の訓練も頑張ってね」
アルム「はい、ありがとうございました」
アルムは頭を下げ、屋敷に向かって走って行った。
◇◇◇
この日の訓練を無事に終え、ゼクトルとの個人授業も終えたアルムは、エドたちの部屋に向かった。魔術学の時間の、あの2人の様子が気になったからだ。が、アルムは部屋の数メートル手前でぴたりと足を止めた。部屋の中から、もはや叫び声に近い口論が行われていたからだ。
ルージャ「もういやだ!!おまえと一緒の部屋になんて、いられない!!」
ノイル「あっそう!!じゃあ、庭ででも寝たらいいじゃないか!!」
ルージャ「ああそうする!!おまえの顔なんて、もう二度と見たくない!!」
ノイル「こっちこそお断りだよ!!「ぼくら」の部屋に、二度と入ってくるな!!」
そこまで聞くと、バタンと荒々しく戸が開き、ルージャが飛び出して来た。アルムが止める間もなく、ルージャはアルムの横をすり抜けて廊下を曲がっていった。