Chapter 10-8
アルムはエドたちの部屋に入りながら、開きっぱなしのドアを閉めた。エドは「あっ、アルム…」と言ったが、ノイルはずっとルージャへの怒りを感じているようだった。
アルムは、なんと声をかけるべきか迷った。普段温厚なノイルがこれほど怒りを露わにするのも珍しい。…いや、8歳という年齢を考えると、それで普通なのかも知れないが、何にせよアルムはノイルとルージャの喧嘩の理由を知りたかった。
アルム「ノイル…?」
ノイル「………」
アルム「何があったの?よかったら―――」
ノイル「うるさいな、アルムには関係ないでしょ!!」
ノイルが大声を出す。しばらくの間、気まずい沈黙が続いたが、やがてアルムが声を発した。
アルム「…そう…だよね。ごめん」
素直に謝り、エドの部屋を出る。普通、心配しているのにああ言われれば、頭にくるだろう。が、アルムはそんな性格ではなかった。
アルム「(でも気になる…あの2人ずっと仲良かったのに…何があったんだろ?)」
いくら考えてみても分からない。初めて2人に出会ったあの日から、ずっと仲は良かったはずだ。2人に何があったのかは、アルムには到底推測できなかった。
◇◇◇
レイシア「喧嘩?あのルージャとノイルが?」
部屋でこのことを話すと、レイシアも目を丸くしていた。と同時に、心配そうだった。
ルーナ「どうしたんだろうね、あの2人とっても仲良しだったのに」
セリス「冗談で服を隠したりしたんじゃねーのか?」
レイシア「あんた、真面目に考える気ないでしょ…?」
また始まった、とばかりにレイシアは息をつく。が、セリスはこう返した。
セリス「考えてもみろよ、8歳同士の喧嘩だぜ?そんなにドロドロした理由があっちゃ逆にこえーよ。そうだろ?」
レイシア「まあ…そう考えられなくもないけれど…」
セリス「とにかくアルム、そんなに気にすることじゃねーよ。どうせしばらくしたら、また2人で仲良くやってるさ。な?」
アルム「うん…そうだね」
アルムはセリスの言葉に頷いた。しかし、アルムはこの喧嘩が長期戦になるような気がしてならないのだった。