Chapter 10-4
アルム「………」
セレイス「どう?」
アルム「ぶかぶか…」

着替えを終えて出てきたアルムに、セレイスは再び吹き出した。

アルム「…笑わないで下さいよ」
セレイス「ごめん。やっぱり大きかったね…」

当然と言えば当然だ。アルムは12歳、セレイスは17歳。間に成長期を挟んだこの年齢差で、服のサイズが同じ訳がない。もっともアルムとしては、困っているところに助け舟を出してくれたセレイスには感謝しているのだが。

セレイス「分かるよ、あの時のアルムの気持ち」
アルム「えっ…?」

セレイスは微笑みながら、アルムに紅茶を出してくれた。アルムはお礼を言って、ティーカップを受け取る。

セレイス「他の人に秘密でやってることがバレちゃうもんね。君の部屋には、確かレイシアがいたっけ?」
アルム「はい…」
セレイス「彼女は鋭くて好奇心が強いからね、ひょっとしたら君のあの格好を見て何て言うか」

互いに苦笑い。

アルム「先生は…ぼくが何をしてたか知ってるんですか?」
セレイス「…まあ、少しはね。エドと一緒にいたスライムがいなくなったから、探しに行ってたんでしょ?」
アルム「あっ…はい…」
セレイス「うん、僕も他の先生に聞いた話だけどね。それでどう?スライムは無事だったの?」
アルム「はい、今エドと一緒にいると思います」
セレイス「そう…それにしちゃ、表情が暗いよ?」

アルムはセレイスを見た。「いつもより暗い」と付け足して、セレイスは紅茶を一口飲む。

セレイス「僕が知ってるのはそれだけだから、きっと他にも何かあったんだね。でも、僕は無理には聞かない。もし言ってくれるんだったら、いつでも待ってるからね」
アルム「はい、ありがとうございます」

ここで、会話が途切れた。ふと外を見て、セレイスは紅茶を飲み干す。それを見て、なぜか慌ててアルムも紅茶を飲み干した。

セレイス「うん。ちょっと暗くなってきたし、夕食の時間も近いね。そろそろ戻った方がいいよ」
アルム「あっ、はい。あの…この服、ありがとうございます」
セレイス「気にしないで。もしどうしたのって聞かれたら、海に落ちたとでも言えばいいよ。それで僕の服を借りた、ってね」

そう言って笑うセレイスに頭を下げ、アルムは自分の部屋に戻った。
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