Chapter 9-11
数秒後、3人はドラゴンの角の入り口前にいた。前に来た時に大変な思いをしたことはアルムもエドも覚えているので、こうして何の苦もなくこの場所に着いたことに対して、少し複雑な思いだった。

アルム「あっ、自己紹介がまだだった!ぼくはアルム。それで、こっちがエド」
エド「よろしくな!」
セイファー「アルム…エド…。よし、覚えた!」

笑顔で2人の名前を口にするセイファー。その屈託のない笑顔は、まさに天使の微笑みと呼ぶに相応しいそれだった。だが、塔に入るや否や、辺りを取り巻く気が邪悪なものになったことを、セイファーは敏感に捉えていた。

セイファー「…レイズのやつ、すっかり変わっちゃったんだ…」

少しうなだれて呟くセイファーの肩に、アルムは自らの手を乗せた。

セイファー「アルム…?」
アルム「きっと大丈夫だよ。レイズは元に戻ってくれる。力を合わせて、スラリンとレイズを助けよう!」
セイファー「…アルム。キミは本当に優しいんだね」
アルム「…そうかな?同じことを先生にも言われたけど…」

話はそこで途切れた。以前とは違って、見たことのないモンスターが3人の前に立ちはだかった。

エド「なっ、なんだこいつ!?」
アルム「分かんない、でもこのモンスターに勝てなかったらレイズになんて勝てないよ!」

アルムは言うが早いか、鞘から剣を抜く。そして、謎のモンスターに斬りかかる。その剣はいつの間にか、炎を纏っていた。

アルム「火炎斬り!!」

見事にモンスターの体を剣が切り裂く。苦しそうに呻きながら、それでも倒れないモンスター。それを見ていたセイファーが、天井の近くまで飛び、どこから出してきたのか、光る弓を持っていた。それを引き絞り、モンスター目掛けて放った。

セイファー「シャイニングボウ!!」

光の矢は無数に分散して、モンスターに襲いかかる。すると、モンスターの体がみるみる小さくなっていった。アルムたち2人は、ただそれをぽかんと見ていた。

セイファー「やっぱり…この塔の中の闇の気のせいで、モンスターが凶暴になってるみたいだ」

気をつけて進もう、とセイファーは先頭を飛ぶ。アルムとエドは頷き合い、彼の後をついて階段を上っていった。
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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