Chapter 9-10
セイファー「うん、そのことなんだけどね…キミたち、この前ドラゴンの角に行ったよね?」
アルム「あっ…うん、行った…」
セイファー「そこでさ、ボクやキミたちと同じくらいの歳の男の子に会わなかった?」
エド「会っ…たよ!あいつがスラリンを連れて行ったんだ!」

悔しそうに、エドは拳を握って下を向く。セイファーはやっぱり、といった表情で、話を続けた。

セイファー「そう。その男の子も、ボクと同じ天使だったんだ」
アルム「えぇっ!?でも…ぼくたちが見たのは普通の…その、羽なんて…」
セイファー「ああ、それなら、ほら」

ふわふわ空中に浮いていたセイファーはそう言うと、地面に降り立って何かを呟いた。すると、背中の翼が嘘のように消えた。

セイファー「ボクたち天使は、必要な時には翼を消すことが出来るんだ。もちろん、その逆もね」
エド「そうだったんだ…じゃあ、あいつにも本当は羽が生えてるってこと?」
セイファー「そうだよ。ただ…あいつは、悪い奴に魂を売っちゃったんだ…」
アルム「魂を…売った?」

セイファーは、寂しげな表情で頷いた。

セイファー「あいつの名前は、レイズ。ボクの…親友だったんだ…」

アルムとエドは、言葉を失った。まさか、そんな関係だったとは思いもしなかった。

セイファー「ボクとレイズは、小さい時からずっと一緒に遊んでたんだ。だけど…しばらく前に、レイズがこっそり人間の世界に行ったきり、帰って来なかったんだ。あとは…さっき言った通り。ボク1人じゃ、今のレイズには勝てない…。お願い、キミたちの力を貸してほしいんだ!」

懇願するように、セイファーは2人に言った。2人の答えはもちろん決まっている。

エド「…おれたちも、2人じゃ勝てないと思ってたんだ!」
アルム「ぼくたちこそ、セイファーがいてくれたら嬉しいよ!」
セイファー「…ホントに…?2人とも、ありがとう!」

セイファーは笑顔で礼を述べた。こうして、思わぬ形で思わぬ仲間が、アルムたちに加わった。そして、改めてアルムは手にしていたキメラの翼を放り投げた。3人の体は空高くに浮かび上がり、そのまま真っ直ぐ目的の場所に飛んでいった。
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「見えない臓器の名前は」
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