Chapter 9-9
―――エドたちの部屋の前。エドもルージャとノイルをうまく避け、ばれないようにやってきたらしかった。
アルム「エド、遅くなってごめん!」
エド「アルム!気にしてないよ、早く行こう!」
アルムは頷き、エドと一瞬に屋敷の裏庭に続く廊下を歩いた。入口に向かう廊下は、誰かに出会う可能性が高い。少々遠回りだが、裏庭に出ればキメラの翼を使うので、さほど問題にはならない。その途中、アルムはゼクトルにアドバイスされたことを思い返していた。
◇◇◇
ゼクトル「いいか?相手に一番ダメージを与える斬り方は、切る瞬間に思いっきり力を入れることだ。これが無意識のうちにできるようになったら、鎧着てようが甲羅かぶってようが関係ないぜ」
アルム「そうなんですか…?」
ゼクトル「ああ。お前は斬る前から力を入れすぎてんだ。もっと始めは力抜いて、当てる瞬間だけ全力でいけ」
◇◇◇
アルム「(2人しかいないんだ…ぼくが頑張らなきゃ!)」
アルムは心の中で強く、自分にそう言い聞かせた。
エド「誰も…いない?」
アルム「…うん、大丈夫みたいだよ」
裏庭の様子を窺うアルム。既にゼクトルの姿もない。2人はゆっくり、裏庭に出た。そして、アルムがキメラの翼を取り出そうと、懐を探った、その時。
???「あっ、キミたちだね!」
アルム・エド「「ぅわっ!!」」
突然聞こえた声に、2人は驚きの声を上げた。見ると、彼らの前には、背中に白い翼の生えた1人の少年がいた。
???「ごめんね、驚かせちゃって」
エド「はっ…羽生えてる…」
アルム「あの…あなたは誰、ですか?人間…ですか?」
状況が飲み込めない2人に、その少年は笑って答えた。
???「ボクの名前はセイファー。一応、これでも天使なんだ。見た感じそんなに歳も変わらないでしょ?だから気軽に名前で呼んでね」
アルム「てっ…」
エド「天使!?」
慌てふためく2人に、セイファーは変わらずに笑顔で頷いた。
セイファー「そう。あっ、ボクの姿はキミたち2人にしか見えてないから心配しないで。というより、ボクがそうしてるんだけどね」
エド「あっ…うん…」
アルム「でも…君が天使なのは分かったけど…ぼくたちに、何の用事が…?」
アルムの問いに、セイファーは少しだけ表情を曇らせて、答えた。