Chapter 9-6
その後夕食も食べ終え、アルムはエドの部屋に向かった。明日のことについて、少し話をしておきたかったのだ。エドの部屋までの途中に、アリュードの部屋があったことに気付いたアルムは、「一応話しとかないと…」と、彼の部屋のドアをノックした。すると、出てきたのはロエンだった。気のせいか、少し表情に陰りが見える。
ロエン「あ、アルム。どうしたんだい?」
アルム「うん、ちょっとアリュードに話があるんだけど…いるかな?」
ロエン「アリュード…。いることはいるんだけど…」
重々しく言って、ロエンはアルムを部屋に招き入れた。すると、なんとアリュードが寝込んでいるではないか。
ロエン「ご飯を食べる前からふらついてたんだけど…さっき倒れちゃって。すごい熱だから、明日の訓練は無理だろうね…」
アリュードの息は荒く、額にタオルが乗っている。おそらく、数日間不眠不休でドラゴンの角に往復したせいだろう。アルムは言葉を失ったが、すぐに言葉を探り、アリュードに話しかけた。
アルム「…アリュード、ゆっくり休んでてね。ぼくは大丈夫だから、ここで待っててよ」
ロエン「???」
その時のアルムの言葉の意味が、ロエンには理解出来なかった。
◇◇◇
エド「そっか…でもおれは行く!スラリンは絶対に助けなきゃいけないから!」
アルム「うん、ぼくも協力するよ!明日も頑張ろう!」
エドの部屋。タイミングよくルージャとノイルがシャワーに向かった時だったので、アルムは周りを警戒せずにエドと話せていた。すると不意に、エドがこう言った。
エド「アルム…ありがとう」
アルム「どうしたの、急に…」
エド「本気でスラリンを助けようとしてくれてるから…おれ、嬉しいんだ」
アルム「エド…」
エド「…おれがスラリンを見つけたのは、島外れの池の近くだったんだ」
そのまま、エドはスラリンとの出会いについて話し始めた。
エド「その前の日に、すごい雨が降ってて、池が大きくなってたんだ。足元もビチャビチャで…。本当は魚捕りに池に行ったんだけど、そこでスラリンが溺れてるところを見つけてさ、そのまま飛び込んだっけ…」
その後で母さんに怒鳴られたけど、とエドは笑って付け加えた。