Chapter 9-2
だが、レイシアにはああ言ったものの、既にエドと約束してしまったことはもう避けようのない事実だ。そして、明日に再びスラリンを探しに行くことも決まっている。言い出しっぺは自分だけに、この約束だけは曲げるわけにはいかない。
アルム「レイシア…ごめん。ぼくは…優等生にはなれないや…」
小さく呟き、アルムは訓練に向かった。
◇◇◇
この日の戦術学で、アルムの脳裏に少し疑問が浮かび上がった。
アーロンはなぜ、実技テストを行おうとしないのか…。
事実、剣術学も呪術学も実技テストはあったし、聞けば魔術学や体術学にもきちんとあるらしい。もしかして、アーロンはさほど強くないのではないか?そのような噂が、生徒たちの間で流れ始めた。アーロン本人がそれに気づいていたのかどうかは分からないが、一時的に流れた噂はタアの一言で完全に断ち切られた。
タア「あいつは5人の中で多分一番強い。オレはあいつの強さをこの目で見たからな。いろんなことを扱う科目だったら強くなきゃ出来ねぇはずだろ」
ぽかんとした表情で、生徒たちはタアの考えを聞いていた。そこにようやく、「そろそろ「私の」話を聞いてもらえるか?」と、やや苛立ち気味にアーロンが割って入った。
◇◇◇
ゼクトル「…ってわけだ。これで、俺が教えられる剣の使い方は全部教えたぜ。あとはどんだけハイレベルな技を覚えて、どんだけ俺が教えたことを使えるかだけだ。5人とも今日まで俺の話を聞いてくれてサンキューな。明日からは、別にここに来なくてもいいぜ」
タアが「来るに決まってんだろ…」と呟く中、アルムは迷っていた。必要最低限の剣の使い方は教わった。となれば、憧れの魔法剣を会得するために呪文を習ってみるか?しかし結局のところ、自分は剣が好きだ。しばらく考えこんで、アルムは訓練終了後にゼクトルに話しかけた。
アルム「先生…毎日お昼、空いてます?」
ゼクトル「昼?ああ、暇なくらいだぜ?」
アルム「じゃあ…明日から、ぼくはお昼に教えてもらっていいですか?ちょっと呪文の練習もしたくて…」
アルムは魔術学を取る上で、ゼクトルの個人指導を求めた。周りのみんなが強く思う中で、自分はその2倍3倍努力すればよいと、ようやく気づいたのだった。
ゼクトル「…分かった。頑張れよ、俺は応援するぜ」
アルム「はい、ありがとうございます!」
ゼクトルに頭を下げ、アルムはすぐにセレイスを探しに向かった。