Chapter 9-1
シャワーを浴びた後訓練の準備をするために自室に戻ったアルムに、セリスたち3人が驚いたのは言うまでもない。
セリス「おっ、おはよう。なんか久…って、アルム!!」
アルム「(遅い…)」
セリス「おい、アルムが帰ってき…」
レイシアたちがいるのか、奥のドアに手をかけて半開きにしたセリスの顔が固まった。直後、彼の腹部におそらくはレイシアのものと思われる、強烈な蹴りが入った。やや後ろに吹っ飛ぶセリスをよそに、レイシアはドアを乱暴に閉めた。そして一言。
レイシア「最っ低!!」
セリス「………」
アルム「(しっ、知らないよ!僕の方向かれても困るし!)」
◇◇◇
数分後、奥の部屋から出てきたレイシアは見るからにセリスに苛立っていた。確かに、女性が着替えているというのにノックもせずいきなりドアを開けるという、セリスの常識外れな行動に原因があるわけだが。結局この後、セリスが謝りに謝り、なんとか許してもらえたようだった。
そして、話題はついに切り替わる。
レイシア「アルム…あなたどこに行ってたの?」
アルムは一瞬躊躇った。言ってしまえば、正義感の強い彼女のことだ、きっとついて来る。しかしアルムにとって、それは誰かを頼っている気がしてならなかった。それでも、背に腹は代えられないのではないか?もう一度自分だけが行ったところで、返り討ちに合うのは目に見えているだろう。激しい葛藤が、アルムの中で渦巻いた。そしてその結果、勝利したのは自身のプライドだった。
アルム「あ…ちょっと森に行ってたんだ」
レイシア「森…?どうしてまた森なの?」
アルム「いや、あの、最近色々訓練して、ちょっとは強くなったかなって思って…。自分の力を試したくなって…」
レイシアはそれを聞くなり、長い息をついた。
レイシア「…アルム、嘘ついても分かるわよ。本当はエドたちと、スラリンを探しにでも行ってたんじゃないの?」
アルム「(…!)い、いや、それもあるけど、見つからなかったし…。結局モンスターと戦ってただけだからさ…」
レイシア「…そう。分かったわ。でもねアルム、自分が強くなったかどうかを確かめたいんだったら、まずはきちんと訓練を受けることよ。そうすれば、わざわざ戦わなくても、強くなったって思えるんだから…」
レイシアの言葉に、アルムは内心胸を撫で下ろしつつ、頷いた。