Chapter 8-12
メリー「…というわけよ。とにかく、肉弾戦になった場合、いかに相手より速く攻撃するか、そのためには―――」
キィン、キィン!!
庭の方から聞こえてきた金属音に、メリーは話を中断した。ここまで聞こえてくるほど大きな金属音を立てるには、よほどの力で剣と剣をぶつけ合う必要がある。メリーは1つ、短いため息をついた。そうして部屋の窓を開け、ゼクトルの様子を窺う(この日は、体術学の訓練は室内で行われていた)。
メリー「ちょっとディル!どうしてそんなにうるさ…」
途中で言葉を切るメリー。なぜかは分かるだろう。ゼクトルとタアが、少し向こうの方で剣をぶつけ合っていたからだ。
◇◇◇
ゼクトル「ほらほら、バテてんじゃねえよ!!」
ギィィン、と鈍い音とともにタアの剣が弾かれる。同時に強烈な痺れが彼の右手を襲った。感覚がなくなった手で剣を振り回すのは自分が危険だ。タアは仕方なく、剣を放り投げた。
ゼクトル「これで終わりだっ!」
タアの脇腹を目掛け、水平に振られる剣。このままでは上下半身に真っ二つだが、もう避けることはできない。タアは一瞬にも満たない時間で、あらゆる手段を模索した。ところが―――。
ゼクトル「…どわっ!!」
何もしていないのに、いきなりゼクトルが横に吹っ飛んだ。すぐさまタア反対の方向を見ると、メリーがしまった、という表情で気砲か何かを放ったと思われる構えをとっていた。
ゼクトル「びっくりしたぜ…いくら俺でも不意打ちには対応出来るかよ…」
メリー「ごめんなさい!思わず体が動いちゃって…だけど、生徒相手に本気になりすぎよ。あのまま斬ってたら、タアが危なかったわ」
タアは何も言えなかった。事実、メリーの言葉は的を射ていたからだが、それ以上に思わぬ横入りに面食らっているのだ。
ゼクトル「いや、コイツ強いから、あの攻撃ぐらい避けるかなーってな…」
メリー「もう…。それにしても、なんでマンツーマンで訓練してたのよ?」
ゼクトル「ああ、アルムとアリュードがいなくてな、ユリスも用事あるってんで、自由にしたら、コイツが稽古つけろって言うからよ…」
ゼクトルはこれまでの経緯を話した。するとメリーは訝しげに呟いた。
メリー「アルムと…アリュードが…?」