Chapter 6-10
アーロン(互いに素手での勝負…武器の言い訳は出来ない)
アーロンがロエンを指名した理由はこれだった。相手と条件を対等にして、自らの生徒の実力を計りたかったのだ。
アルムたち大半の生徒には、2人が瞬時に消えたように見えた。そんな中で、レイシアとリズだけが2人の姿をその眼で追えていた。
レイシア(いいスタートダッシュね…ロエン、頑張って!)
リズ(スピードは…ほとんど五分…)
もちろん、両教習所の教師たちにも、2人の動きは見えている。
ロエンは近づいてくるグラッドをしっかり見ていた。グラッドは彼の予想通りのスピードだった。
ロエン(やっぱり…レイシアより遅い!)
ビシッ!!
ロエンは鋭い蹴りをグラッドに当てた。そして、その反動で距離を取る。第一撃を見事に当てたロエンは、これで自信がついた。レイシアと戦った経験を最大限に活かし、続く攻防も全て理想の展開でロエンが優位に進めた。…そして。
グラッド「はぁ…はぁ…参りました!すごいね君…」
手合わせはロエンの圧勝だった。互いに握手を交わすと、どちらからともなく拍手が起こった。そして、レイシアが小さな声で言った。
レイシア「…私より強かったりして…」
セリス「本当か?なら、あいつより強い俺はお前よりも強…嘘だって!マジになんな!」
拳を振り上げるレイシアから逃れるセリス。年上の男が年下の女から逃げるという、なんとも情けない絵面だ。
ランカー「こちらの我が儘を聞いてもらって、ありがとうございました。今から食事なんで、ご一緒にどうぞ!」
言われてみれば昼時だ、とアルムは思い出す。思い出した途端に大きな音で腹が鳴る。横にいたルーナと一緒に大笑いしながら、そしてローレシアの食事に期待しながら、アルムはぞろぞろと動く集団に従った。