Chapter 6-8
数秒の後、彼らの目には、信じたくない光景が映し出されていた。
頑丈な造りをもってそびえ立った城の周りは、一面肌色の世界が広がっていた。草木の姿はほとんど見当たらない。あるのは地面の割れ目から顔を出した頼りなさすぎる薄緑の雑草と、枯れて褐色になった細い草ばかりである。
メリー「こ…こんなことって…!」
シェルト「やはり…ラグッドさんの言葉は真実でしたか…」
再び重苦しい雰囲気がその場を包む。乾いた風が、全員の頬にぶつかった。
アーロンはかつて見たローレシアとのあまりの違いを認められないのか、遠く四方を見回していた。そして、1つの事実に気づく。
アーロン「なっ…何だあれは…!」
アーロンが見たもの。それは、ローレシアの西にそびえる、巨大な巨大な岩山だった。陸続きのローレシアとサマルトリアとを隔てるように、それはかなりの高さを持っている。これでは、隣国サマルトリアの様子は全く分からない。
アンナ「1年半ほど前から…いきなりあの岩山が現れたんですよ、先生。ローレシアが変わったのはそれからです。あたいが保証する」
アンナの話を聞いたシェルトが、分かりましたよ、と呟いた。
アルム「分かった…?」
シェルト「はい。あの岩山こそ、ローレシアが砂漠と化した原因です。おそらくローレシアに降っていた雨は、西のサマルトリア側から来る湿った空気が作る雲によるものだったのでしょう。しかしあんなものがあっては、湿った空気はこちら側に届きません。それだけではありません…。あの岩山から、わずかに邪の気配を感じませんか…?」
アルムたち生徒は何も感じてはいなかったが、アーロンたちはそのわずかに伝わってくる気配を察知した。さすがは勇者の仲間だっただけのことはある。もちろん生徒たちは知らないのだが。
アーロン「なるほど…仕事が1つ増えた」
アーロンは一呼吸おいて声を上げた。
アーロン「まずはローレシアにて予定通り事を行う。その後…全員であの山に乗り込む」
セレイス「ちょっとラルド!!何考えてるの、みんなを巻き込むなんて…」
アーロン「心配ない。この13人は、私たちの予想を超える力の持ち主だ。だからこそ、恐怖を感じることにも好奇心を持てる…」
アーロンが見る先には、生き生きとした表情の生徒たちの姿があった。