Chapter 6-5
同時刻、体術学では、2人の人物が激しく動き回っていた。少年が打った突きを少女はひらりとかわす。一方で少女の蹴りを、少年はスレスレながらも避ける。―――今戦っている2人は、紛れもなくレイシアとロエンだった。
訓練が始まる前、ロエンがレイシアに手合わせを申し出たのだ。このところ実戦をしていなかったレイシアはそれを快諾し、今に至る。
と、ここでロエンが仕掛けた。フェイントを多用し、レイシアの動きに隙を作る。レイシアが軽く打った突きを完璧に打ち払い、彼女の体勢を崩した。
ロエン(…今だ!)
判断は一瞬だった。一番自信のある回し蹴りで、勝負を決めにかかるロエン。が、レイシアはふ、と微笑を浮かべると、素早く身を縮めて回し蹴りをかいくぐり、彼の眼前にその拳を突きつけた。―――勝負ありである。
ロエン「…はぁ、また負けちゃった…。どうしてそんなに強いんだい?」
その問いにレイシアは「私はまだまだ強くなんかないわ」と首を振り、直後「あっ、そうだ」とロエンに言った。
レイシア「攻撃する前に、上体が動いてるから見切りやすいの。そこにちょっと気をつけたら、とっても強くなれると思うわ」
さらりと言うと、彼女は腕で額の汗を拭った。
メリー「そうね、ロエンはもう少し上体に気をつけるといいわ。レイシアは攻撃の初速がまだまだ上がると思うから、もう少し頑張ってみて」
ロエン・レイシア「はい!!」
メリー「うん、じゃあ2人とも少し休んでていいわよ。セリス、アンナ、2人の戦いを見ててどう思った?」
セリス「…えっ?いや、それは…」
感想を述べるのが苦手なセリスにとって、今日の訓練は訓練を超えた試練となった。
◇◇◇
―――アーロンたち5人はその夜、集まって話をしていた。
アーロン「全員よくやってくれてるよ。やっぱり気にするな、と言う方が無理だな」
ゼクトル「俺たちも勉強になるぜ、多分。まあ、ムカつく奴だったらちょっと殴るかも知んねえけど」
メリー「先生が喧嘩してどうすんのよ…。大体、私たちに5対5で勝てる人はいないんじゃない?」
シェルト「それはともかく、私たちもやることはやってますからね、心配はありませんよ」
セレイス「そうだよね、僕も楽しみになってきたよ!」
彼ら5人もまた、ローレシアに多くを学びに行くのだった。