Chapter 6-4
ルーナ「それっ!!」
ルーナの声の数秒後、セレイスはわずかな風を感じた。
セレイス「うーん…そうだね、もっと目標を明確にイメージして詠唱してみたら?」
ルーナ「め…いかく?えいしょー?」
セレイス(あちゃー、知らなかったんだ)
ゼクトルの口滑りから少し時間を遡り、魔術学では今バギの呪文の練習に入っていた。メラ、ギラ、ヒャドと順調に覚えてきたルーナたちだったが、この呪文で初めて躓いていた。
エド「よーし、おれが一番に決めてやる!バギッ!」
―――しかし、何も起こらなかった。
思わず苦笑いをしながら、フォローするようにセレイスは言った。
セレイス「元々この呪文は、聖職者の護身用に生み出さ…あー、僧侶とかの人が身を守るために考えた呪文で、魔法使いが使う呪文じゃなかったから、少し時間がかかるのかも…えぇっ!!?」
言葉を切ってセレイスが驚くのも無理はない。バギの難しさについて説明している最中に、ノイルがいとも簡単にバギを成功させてしまったからだ。
ノイル「あっ、これ簡単だよー?」
セレイス「すごいよ、ノイル!みんなも頑張って!」
セレイスの驚きはこれだけに止まらなかった。ルージャがノイルの動きを真似てやってみたところ、これまた見事に成功したのである。―――が、セレイスが慌てた理由は別にある。
セレイス「ちょ、そっちにルーナが…!」
ルージャの放った小さな竜巻は、ルーナへと向かっていた。バギと言えども、痛みを感じることに変わりはない。セレイスがルーナの盾になろうと飛び出しかけたが、直後彼は三度驚愕する。
ルーナ「よっ!っと…」
ルーナは愛用の鞭を巧みに振り、バギの風をかき消してしまった。
ルーナ「あたしだって、みんなには負けないんだから!」
セレイス(みんなまだまだ小さいのに…すごいや、きっとすぐ追い抜かれちゃうね…)
セレイスは4人を見て、彼らにならいつでも希望を託せる、と感じた。