Chapter 5-12
ルプガナ北西の森―――。
その最深部の怪しげな霧はすっかり晴れ、深い穴も無くなっていた。辺りに巨大なモンスターの姿はなく、小鳥が戻ってきた森はほとんど全てが元通りになっていた。
―――ただ1つを除いては…。
アルム「いない…」
アルムたち3人は以前穴のあった場所に到着していた。しかし、ここに来るまでにレイシアの姿を見ることはなかった。
セリス「入れ違いになったんじゃねーか?違う道通ったとかさ…」
ルーナ「…ちょっと待って…!何か聞こえる…!」
瞑目して耳をすませるルーナ。十数秒の後、彼女はその瞳を突然開いた。
ルーナ「…爆発だ!」
そう言うや否や、ルーナは音の聞こえた方に走り出した。「ちょっとルーナ!?」「おい、待てよ!」と2人も慌てて彼女を追いかける。
入り組んだ木々の間を縫うように駆け抜ける3人。その先で、彼らは衝撃の光景を目の当たりにする。
ルーナ「なっ…なにこれ…」
アルム「ここだけ…吹き飛んだみたいに木がない…」
セリス「さっきの爆発のせいか…」
きれいに木が円形に無くなっていた。同心円状に抉れた地面が、その爆発の凄まじさを物語っている。
爆発の原因を探るため、周囲を見回していたアルムの両眼が、いくらか奥の木の根元に横たわる少女を捉えた。―――紛れもなく、それはあの凄まじい爆発に巻き込まれたのであろう、全身に酷い火傷を負ったレイシアだった。
アルム「レイシア!!」
すぐそばに駆け寄って、その右手を握る。するとレイシアの眼が、わずかに開いた。
レイシア「………っ……て……い……」
セリス「今はしゃべんじゃねえ!!」
ルーナ「…ホイミ!ホイミ!」
懸命に呪文で回復を試みるが、焼け石に水だった。
セリス「…すぐに戻らねーと…!」
セリスは躊躇なくレイシアをおぶうように担ぎ、先を走るアルムたちについて走り出した。その背中で揺れるレイシアの口からは、ゆっくりと深い呼吸が聞こえていた。
〜続く〜