Chapter 5-10
シェルト「えー、それでは今日最初の訓練を…始める前に、エフェルトさんがいませんね…?どなたか知りませんか?」
部屋が違う生徒にはまず分からない。アルムたちも分からないふりをして、首を振ったり部屋を見回したりした。シェルトもまた、部屋の入り口を見た後に一度だけ生徒全員を順に見回し、先ほどより少し大きな声で言った。
シェルト「…そうですか。分かりました。エフェルトさんには悪いですが、訓練を始めたいと思います。まずは…」
シェルトは全くと言っていいほど、この件に関して追及はしなかった。訓練が終わった後も、シェルトはレイシアの話題に触れることはなかった。
続く戦術学の訓練も普段通り行われ、アーロンもまた特別アルムたちに詰め寄るようなことはなかった。だが、その後がシェルトと違っていた。アーロンはなんと、訓練の終わりにアルムたち3人を呼び出したのだ。
アーロン「お前たち3人が呼び出された理由は分かるな?」
しばらく置いて、3人は頷く。アーロンは深く考えこむような表情をしていたが、やがて顔を上げてこう言った。
アーロン「お前たちも、エフェルトのことについてあれこれ聞かれるのは面倒だろう?」
アルム「そんなこと…でも、ちょっとあるかも…」
アーロン「だろうな。だが、そのようなことは質問しない。エフェルトが森に向かったことぐらい、私にも見抜ける」
3人「!!!」
一斉に顔を上げ、驚いたようにアーロンを見る。アーロンは少し深めの息を1つした後、ゆっくりと静かに、そして少し低い声で言った。
アーロン「…私が聞きたいのは、お前たちは今何故ここにいるのだ、ということだ」
ルーナ「えっ…?」
アーロン「お前たちのいう仲間とは、その程度の絆なのか?危険の計れない場所に、1人ではまず勝てない者を行かせてじっと待っていられるのか?…次は剣術、魔術、体術学だが、訓練に出るか否かは私ではなく、お前たち自身で決めることだ」
アルム「僕たち自身で…?」
そこまで言うと、アーロンは自らが座っていた席を立った。後に残った3人は、しばらく呆気にとられて言葉を発せずにいた。