趣味:切手収集


父さんの集めた切手を見せてもらうのが好きだった。スクラップブックいっぱいにきれいな花や、かわいい動物、ものものしい偉人などが描かれた切手は見ていて楽しい。たまに珍しい外国製の切手なんかもあって、触らせてもらえなかったが、見せてもらえるだけで満足だった。
「健太郎、新しい切手が入ったんだけど、見るか?」
「うん。見る!」
父さんがスクラップブックを二冊持って部屋に入って来た。今日はどんな切手を見せてくれるのだろう。
「今日のやつはな、花の切手だ」
「花?」
「これはすごいぞ。北海道限定のやつでな、一時期しか販売されなかったらしいんだ」
「へえ、そうなんだ」
スクラップブックを開いて、新しいページに北海道の花の切手が貼られている。他にも数枚新しいものが貼られていた。だが、このスクラップブックはもうすぐなくなるようなこともない。どうして二冊なのだろう。
「父さん、それは?」
「見つけたのか」
父さんがにやりと笑いながら、もう一冊のスクラップブックを開く。さっきの切手と同じものが貼られていた。他にも幾つか、かっこいい切手が貼ってある。
「健太郎、もうすぐ誕生日だろ?」
「うん」
「これはな、ちょっと早いけどプレゼントだ。何枚かは餞別であげるけど、後はお前が集めるんだぞ」
スクラップブックを閉じて、俺に手渡してくる。表紙には「誕生日おめでとう!健太郎」と書かれたメッセージカードが貼られている。それがちょっと照れくさい。
「ありがとう。全部俺が欲しかったやつだ」
「たまたまダブってたからな…。そうか、欲しかったやつか」
「うん。このライオンがかっこよくて好きなんだ」
ずっと触りたかった切手を撫でながら頷く。父さんは俺を見て、静かに微笑んでいた。
これまでずっと自分も集めたいと思っていた。きっと父さんには全部お見通しだったんだろう。



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