洗濯物


「チッ」

 南の部屋のベランダに干されたそれを見て、亜久津は一つ舌打ちをした。
 明らかに南のサイズとは違う、南の趣味とも違う衣服が何枚か干されている。サイズもばらばらだ。

「どうした、亜久津。舌打ちなんかして」
「…テメェ、俺以外の男を部屋に連れ込むとはどういう了見だ? あぁ?」

 のんきな顔で麦茶など持ってきた南を亜久津は精一杯睨み付ける。しかし、南は相変わらずのんきにああ、あれね、と相槌を打った。

「あれ、東方のだよ。んで、ちっこいのが千石。中くらいのが錦織だよ。今は干してないけど新渡米とかのもある。あいつら、たまに泊まりに来るもんだから、勝手に服とかパンツとか置いてってるんだ」
「チッ…また東方か」
「ははは、亜久津が思ってるようなモンではないよ。なんで親友とそんなことにならないといけないんだ」

 東方の洗濯ものを忌々しげに睨み付ける亜久津を可愛いと思いながら、南はのんきに笑った。泊まりに来ている奴は東方以外にもいるのに彼ばかり目の仇に取られているのはやはり、南の親友というポジションが羨ましいからだろうか。

「俺以外の男にケツ掘られんじゃねーぞ」
「ははは、亜久津以外の男がこんなでかい奴掘るかよ」

 そこは女への浮気の心配をしろよ、とその白菜頭にチョップを喰らわせる。
 東方や亜久津ほどではないが、南もそれなりにでかい身体をしている。そもそも、男で南をそんな対象として見ているのは亜久津ぐらいなものだ。

「あ、亜久津、もしかして…やきもち妬いてる?」
「……ケッ」
「大丈夫だよ。確かにみんな好きだけど、そういう意味の好きは亜久津だけだから」

 ぷいっと照れ隠しのようにそっぽを向いてしまう亜久津。
 そんな亜久津はやっぱり可愛いと思いながら、南はまたのんきに笑った。

「それじゃあ、今から証明してみせろ」
「何を」
「俺にしか勃たないかどうかだ」

 南の腕を引っ張って、そのまま押し倒す。
 亜久津の激しいキスを受けながら、ああ明日は派手に動けないな、と南はなんとなく思った。

(120712)



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