星の輝き


ほんのたまに見上げる星空は輝く宝石のようで…。
私達の心を動かしていく―
もう少しだけ…後、少しでいいから…。
 一緒にこの星を見ていてくれませんか?


放課後…部活も終わって今は帰宅途中。
日はすっかり暮れて空は夕焼け色をしている。
一人家路を歩いていると後ろから足音が聞こえる。
ゆっくりと振り返ると裕次郎が手を振って私のところまで走ってくる。
何か用事かと思い、その場に立ち止まって裕次郎を待つ。
追いついた裕次郎は軽く息をつくとニッコリと笑顔になった。

「なあ鈴音、一緒に帰らねぇ?」
「…別に良いけど…」
「んじゃ、決まりな!」

そう裕次郎は言えば私の手を掴んで歩き出した。
今は夏、暑いけど…繋がれた手は暖かく感じた。
私は裕次郎の進むままに連れられて歩いた。
斜め後ろから見る裕次郎はどこか大人っぽくてカッコよく見えた…気がする。
私の視線に気付いた裕次郎が「ぬーがや?」と問うたけど数回横に顔を振った。
腑に落ちない顔をされたけど再び前を向く裕次郎。
特に会話らしい会話はしてないけど…一緒に居られるだけで幸せだった。
自分の顔が綻ぶのと同時に裕次郎が足を止めた。
それに気付いて私も止まれば裕次郎がこちらを見ている。
私は何か気恥ずかしくて周囲を見渡せばそこは海だった。
もう時刻は夕暮れから夜に変わっている。
夜の海は真っ暗だけど月と星々の光が反射してキラキラと輝いている。
再び裕次郎に視線を戻せば裕次郎は私を見ていた。

「何?私の顔に何かついてる?」
「…ついてる」
「へ?!え、ど、どこ?」
「んじゃ、目瞑ってろ」

何故?そう問いたかったけど虫とかだったら困るし…私は言われた通り目を瞑る。
真っ暗な闇の中で聞こえるのは海の小波、風の音、私らの息遣いだけ。
何となく、だんだん裕次郎が近付いてきてる気がして、薄っすらと目を開ければドアップの裕次郎が目に写る。
つい、一歩身を引けば小さな凹凸に足を滑らせバランスを崩し見事に転ぶ。
裕次郎もそれに驚いたのだろうか、私を転ばせないようにしようとしたのだろうか…。
結局の所、一緒にバランスを崩して私の上に居る。
痛いな…と小さくごちりながらふと上を向けば裕次郎と星が見えた。
星は私達をクスクスと笑うように瞬いている。

「あ、わっさん…」
「私こそ、ごめん…ありがと」
「わんも一緒に転んだから別に良いさ」
「そ?」

裕次郎は私の上から退いて横に座る。
私も自分の身を起こし、裕次郎の肩にもたれ掛かる。
それに驚いたのか裕次郎はビクリとするも何も言ってこなかった。
裕次郎の顔を見れば真っ暗だからわかりにくいけどほんのりと頬が赤く染まっている。

「裕次郎、顔に何かついているよー」
「へ?どこに?」
「んー…私が取ってあげるから目、瞑っててー」
「あいっ?!ああ、わかった、よ…」

自分と同じ事を言うもんだからちょっと焦ってる裕次郎。
その姿に私はクスリと笑いながらも、そっと裕次郎に近付く。
君と私の距離、後…5cm。
そんな距離がちょっともどかしく感じた。
だからこの気持ちを掻き消す様に唇に触れるだけの…一瞬の…キスを送った。
そして先程の体勢に戻れば、「もういいよ」と白々しく告げる。
君も私と一緒で顔は真っ赤という表現が似合うくらいになっているだろう。

「ね、裕次郎」
「ぬ、ぬーがや?」
「もうちょっとだけ、星見てよう?」
「ん、了解」

お互い、顔の赤みが引くまで…その間だけでいいから…。
二人で星を眺めよう。
そしてそれが終わったら告げてみようか、君にこの想いを…―

君との未来を作ってくれた星に感謝しながら
そっとそっと眺めよう

星の輝き

(裕次郎、なかなかほっぺ赤いまんまだなぁ)
(…鈴音の唇やわら……ってわん何考えてんだよ!早く頬の火照りなくなれ)


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