「あの声は、やはりお姉さま…」
あの事件の後、執行猶予で収まった私は、葉桜院を抜け出し彼の事務所正面のホテルに泊まっていた。毘伎尼さんへは連絡をとっているから、葉桜院の心配はしなくて良い。
なのに。
びしゃびしゃの装束を握りしめて、あの声を思い出す。
(リュウちゃん…)
見下していた筈なのに、彼を呼んでいた。あまりに真っ直ぐな、それは本当にあの姉だとは思えない。
(嫌な予感がする、)
吐き気を伴う、混沌とした空気が雨を濡らしていた。
『うざったい。』
あのオトコ。殺してしまいたい程の良心が私の邪魔をする。
私は初めて、愛して潰してやりたいという感情を彼に抱いた。なのに彼は…別のオトコしか、見ていなかった。信頼からくるものなのか…
いずれにせよ、私には邪魔なものでしかない。
『ミツルギ、ね。リュウちゃん…』
自身の体を、出来損ないの片割れを探した。
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