対等心理 2 | ナノ



嫌な予想通り。

ぼくの両手首に繋がる、イトノコ刑事の手錠。御剣はげんなりしたぼくを見て、身を預けていたシーツに手をついてぼくにのし掛かってきた。
じゃらじゃら、とこれ見よがしに鳴る手錠が、御剣につけられた束縛に繋がるなら。ぼくは即刻拒否したいのだが、ぐいぐい体を押し付けてくる御剣はとてもじゃないけど退けられるものではない。
感嘆を交えて吐き出された息がぼくの首筋に降りかかると同時に、針を突き立てられたかのような、独特の痛みが走る。

「成歩堂…っ」
「お前の頭疑うよ…」

そうやって皮肉をこめ、手錠を見せつけるように揺らしてみた。悪いな外そう的な展開があると思っていたかったのだけど、…
御剣の反応は。

(わ、笑ってる…)

普段は白目向いて唇震わせてるようなヘタレなのに、こういう時だけ優位に立とうとしてくる。心の中で悪態をつけば、熱い熱い粘膜が、今まさに付けられた痕を覆う。くすぐったくて退けようとした、けれど手錠が笑うように鳴るだけで、ぼくはされるがままだ。
それに気を良くしたのか、項辺りから鎖骨へ、はだけたシャツを避けて、胸辺りへと這いおりる舌。同時に間から、一つの掌が入り込む。

「ホント、お前って…ん、」

びくり、と反応する身体を恨む暇もなく、乳首を撫でたり摘まんだりと弄る手に意識が集中して余計もどかしい。上気する頬、ぼくから舌を離し、御剣は下唇を舐めた。

「普段なら此処で待ったがかかる筈だが?」
「ん…んっ!…お前にこのタイミングで言っても無駄だろ!」
「なら、続けるが…?」

勝手にしろよ、と言い捨ててそっぽを向く。
御剣の視線は徐々に下腹部へと降りていき、ついにベルトのバックルに手をかけた。

下着の上から触れられ、先ほどの愛撫で既に硬く持ちあがっていた性器がびくり、と震える。同時に尻から肩の方にかけて寒気が走り抜けていった。
御剣はすぐに仕掛けてくると思いきや、手が使えないぼくを楽しんでいるのか下着越しに触れることしかしない。肩を震わせ身悶えているぼくを御剣は少し笑いを浮かべて見下ろした。

「御剣、おま、キツいって!」
「少々乱暴になるぞ…」

下着を剥ぐように抜き取られた後。温めた潤滑剤をその手にだらりと垂らし、御剣はそれを躊躇せずぼくの後ろに塗り込め始める。粘着質な音と共に滑り込むように入った第一関節。いつもは此処で一気に擦られる筈なのに、一本の指が入り口を広げている。なんだろう、変に丁寧な解かし方に頬が火照ってきた。

「…、いっ」

中に入ると同時に、下半身から少しの痛みが走り、喉奧をぐいぐいと押されているような気持ち悪さに思わず呻いた。御剣はぼくを見て少し心配したような顔をするかと思えば、更に笑みを深めて指を増やす。
こいつ…ぼくが苦しいことを楽しんでいる、のか。
御剣ってこんなにサドだっけと考えていれば、解かし終えたらしい。御剣は指を全て引き抜き、ぼくにまたキスをする。

「大丈夫か…?挿れて、」
「このっ、いい加減手錠外せよ!」

断る、と言う口がまたぼくの唇を覆ったかと思うと、擦れた金属音が襲う。
相変わらず手錠はぼくを縛り付けて、御剣を満足させるだけ、だ。