息苦しき飛空 | ナノ



私は知っている。
いや、知ってしまった、と言う方が正しい。知りたくなかった、そう、ずっとずっと追いかけてきた背中は、私とはまったく別の方角へ向かっていっていたなんて。

「成歩堂が、好き…なのだ」

笑えない冗談だと笑い飛ばして見せた。駄目だった。レイジは本気だった。執務室で明かされた彼の胸の内は、私を映していなかった。決して恋愛感情を抱いて欲しかった訳ではない。パパを失った私を、認知して欲しかった。
なのにレイジは、私が初めて負けた相手を見つめていたのだ。

「やっぱり、ね」
「どういうことだ」
「やけに成歩堂龍一を見てると思ったら、そういうことだったのね」

メイ、と私の名を呼び、レイジは歯を噛み締めて私に言った。

「私は、どうすればいい…」

答えを出したくない、と思った。私はどうすれば良かったの?アメリカ出身の私としてはこの国の同性愛事情は良く分からない。アメリカ育ち、というだけあって不思議とレイジに嫌悪感は湧かなかった。
只、どうして彼を愛するの?そう問う勇気は私には無いことをまた知った。

「私は…知らないわ」
「メイ、」
「私の、いいえ、狩魔の名において…レイジ、貴方が答えを出すべきよ」
「メイ…すまない」
(謝らないで!)

鞭を握りしめる。肩が震える。
レイジには一生追いつけないのだと思い知った、帰国したての執務室の中。此処の空気をもう吸いたくなくて、彼に背を向けて廊下に出て。
検事局の窓から見た景色を横切る鳥が、私の眼前で落ちた。


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