(センリさんちのハルカお嬢様と使用人ユウキくんパロ)



 お嬢、お嬢、と鼓膜を揺さぶられて、意識が一気に浮上していった。酷く悪い夢を見ていた気がする、なんだったろう、と思いながら頭を振ると、その目の前に。恐ろしく端正な顔に心配そうな表情を浮かべて、ひょいと覗きこんでくる少年がいる。

「平気ですか、お嬢…魘されてましたが」
「あ…あの、何でもない、何でもないのユウキくん!」

 ぶんぶんと勢いよく否定すれば、少年は吊りがちな瞳をつと見開いた。その勢いに圧倒されてぽかんとした顔で、「そうですか…?」と訝しげに、まだ疑いの残る声で尋ねてくる。ハルカはそれにも力強く頷いた。それでもじいっと見つめてくる赤い瞳が無性に気に入らなくて、お嬢様はぐいとユウキの帽子をずり下ろす。

「おぶッ!?ちょ、お嬢、前が見えませんってば!」
「いいの!着替えるから出て行ってよ!」
「前が見えないのに!?」

 無茶だ!やら、いいから出て!やらと騒がしく言い合う声は、少女に与えられている部屋のドアから漏れ出ていた。その声で途端に朝の騒がしさが訪れた屋敷に、廊下を往く使用人たちが微笑ましげに口元を緩ませる。
 ちょうどよろめきながらドアをくぐり抜けてきたユウキに出くわした執事長の青年は、自分の部下である彼に対し、朝に似つかわしいすがすがしい笑顔を浮かべてみせた。楽しそうですねと少年がげっそりした顔をしたのも気にしない。青年はにっこりと笑顔を浮かべてぴんと姿勢を正したまま、告げた。

「青春だねえ」






(11.07.24)

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