×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
■恋の温度

昼休みって結構賑やかだ。

「だからー、旭さんはそういうトコがダメなんっすよ!」

「う、西谷……ごめん。」

「だから──!そういうトコっすよ、そういうトコ!」

「あー、西谷もっと言わないとヒゲちょこには伝わらないぞー。」

「ちょ、大地!ヒゲちょこってまたヒド!」

「ウハハ、旭さんへこみすぎ──って!ハッ!潔子さん発見!潔子さぁーん!あなたの下僕田中ですッ!今日も美しいぃぃ!」

「田中、教室で騒ぐな。うるさい。」

「はぐあッ!すみません、大地さん!」

3年4組の教室に集まったいつもの面子の賑やかなやりとりに、自然目を細める。

「アハハ、田中は今日も元気だなぁ。」

「もちろんっすよ!潔子さんのお姿を拝見して元気2.5倍です!」

「2.5倍って!」

同じクラスの大地、隣のクラスの旭、どこからともなく現れる2年生コンビの西谷と田中。
窓際に寄せた机でそれぞれに弁当やら菓子パンやらを口にする賑やかすぎる時間。
それが好きだ。

「今日はミニゲームも入れるんだよな、大地。」
一番好きなバレー。

「ああ、IH近いし実践形式でいろいろ試していきたいしな。」
一番好きな仲間。

居心地がよくてワクワクして胸の弾む時間。


けれど、
最近は───昼休みの見慣れた景色が、少しだけ違って見える。


「はー、今日の学食もマジ死闘。」

「だからお弁当持ってきたらって言ったじゃん。」

「だってぇ──。」

「マキ、学食のコロッケ好きだもんね。」

三日月とは、去年までの2年間同じクラスだった。
今年のクラス替えで5組となった彼女とは離れてしまったが、去年まではそれなりに親しくしていた……と思っている。

1年の文化祭で一緒に実行委員をやって、2年では修学旅行の班も一緒だった。
少し澄ましたように見える外見と裏腹に明るい三日月の性格、話せば話すほど気が合った。
3年のクラス替えの張り紙を見ながら三日月の名前を探している自分に気付いた時──、自覚した。

”俺、三日月のこと好きだったんだ。”

一度気付いてしまうと、感情というのは始末に悪い。
一言で言えば、どうしたらいいのかわからないのだ。


三日月とは同じクラスだったからこそよく話もしたが、クラスが別れてしまった途端挨拶もままならない距離になってしまった。

その三日月が、最近はこうしてよく昼休みに4組を尋ねてくる。
三日月が今やっている文集委員会の打合せを兼ねているらしいというのは、会話から察することができた。

けれど、

「でさ、ってスガ!聞いてる?」

「え、あ、悪い。なんだっけ?ちょっとぼーっとしてた。」
大地に呼びかけられて慌てて振り向けば、「大丈夫かよ」と呆れた顔が見返した。

「んーちょっと腹いっぱいで眠いなって思ってただけ。」
アハハと笑って視線をいなす。

「眠気覚ましにレシーブ練習でもすっか。日向たちどーせ中庭でやってんだろ。」
大きく伸びをして立ちあがる。
チラリと視線を逸らせば、三日月が友人の話に頷きながら笑顔を返すのが見えた。


連絡先なら知っている。
修学旅行の時に班のみんなで連絡先を交換した。
だけど、それ以来個人的に連絡したことはない。


高3の春、好きな人ができた。
むず痒いような、ぎゅっと切ないような、ワクワクするような不思議な感覚。

揺れる胸の内を抱えて後にした教室は、午後の日差しに照らされていた。


[back]