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■マジック ショコラ

「……菅原、菅原くん。」

「う、ん……て、あれ?俺、寝てた?」
試験前の図書館。
勉強するつもりでやってきたはずなのに、いつのまにか寝てしまっていたらしい。

「うん、もー図書館閉まるよ。」
それにしてもよく寝てたねと彼女が笑う。

「ま、マジでか……やべ、これ終わらせようと思ったのに!」
意識が覚醒すると途端に恥ずかしくなって、俺は慌てて開いたままの参考書を閉じた。

「顔にあと、ついてる。」

「うっそ!」

「ホント。」

「あ、よだれー。」

「えっ、ちょ……!」

「それはウソ。」
クスクスと声を抑えて笑う様子に、体温が上昇した気がした。

「冗談きついよ。」
照れ隠しに言えば、

「ごめんごめん、でもさ」
彼女は小さく首を傾げた。

「菅原くんでもこーゆーことあるんだね。」
てさ、


「………。」
そりゃあ、あるよ。

部活と受験を両立するって言ったけど、なかなかどうして大変なことばかり。
正直1年後が心配になる。

それに、さ。
部活だって……ちゃんと俺、役に立ってるかなって……不安になることだってあるんだ。

レギュラーでもないのに部活に残って、あいつらの邪魔になってないかなとか。
大地や旭はちゃんと本音で話せてるよなとか。
時々……得体の知れない感情が襲ってきて、本当は少し怖い。

だけど、そんなこと言えるわけないし!


なんて、ぐるぐると考えていたら……

「菅原くん、今度は眉間にシワ。」
やっぱ珍しいねと彼女は言って、何かを考えているような仕草をした。


それから、

「よし!」
かがみこんでいた机の前から立ち上がると、なにやらカバンをごそごそ……。

「そなたにこれを授けよう。」

「え?」

コロン、と机の上に転がったチョコレートが二粒。


「これは魔法のチョコレート……じゃないけど、カカオってリラックス効果があるんだって。」
ふふふ、と笑うのはピンク色の口唇。


その日から、俺は―――。



もしかして、チョコレートには本当に魔法がかかってた?

まさかな。
だけど、やっぱり……君のことが頭から離れないんだ。


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