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■恋の果実 11

ゆいちゃん。
大好きな俺のゆいちゃん。

いつだって、一番大事なことを教えてくれる大切なひと。


忘れかけていた想いに、
目を逸らしていた願いに、気付かせてくれた。

「俺、バレーやめるのを、やめる。」


そうだね、そうだったよね。
俺、バレーとゆいちゃんだけは絶対諦めないって決めてたのに。
君をなくしてからの俺は、いつの間にか臆病になってたのかもしれないね。

君を裏切って、傷つけて、言い訳ばかりの俺を……それでもゆいちゃんは最後まで応援しててくれた。
仲間とつないだボールを決して落とすまいと必死で追いかけたあの日、最後まで応援してくれた。

それを知った時───ようやく思い出した。

「諦めるなんて、俺らしくないよね。」
そうだよ。
俺ってさ、しつこくて執念深くて、絶対に諦めない男───そうだったよね。
どんなに高い壁でも、どんなに強い相手でも、この及川さんがさ、怯むなんてどうかしてる。

「徹……。」
2年ぶりに会った君は、あの頃の君のまま。
大人っぽくなってすごくキレイになって眩しいくらいの君だけど、優しくて真面目なゆいちゃんは変わらないまま。

ああ、俺……やっぱりゆいちゃんが好きだなって、すごくすごくそう思って───そうしたら、気が付いた。
弱い自分を受け入れることを覚えた情けない自分に。

だけど、こんなの俺じゃない。


「ゆいちゃん。」
怪我のこと、やっぱり怖いよ。
すっごい痛かったしさ、もう飛べないんじゃないかってイメージが頭にこびりついて離れない。

でもさ、

「言ってもいい?」
俺、ちゃんと思い出したよ。
バレーとゆいちゃんは諦めないっていう気持ち。

ねぇ、君が思い出させてくれたんだよ。


「え、と……。」
戸惑うゆいちゃんの視線、困らせてるかな?
だけど、言わせてほしいんだ。

「俺、言いたい。」
俺は、及川徹。
デリカシーなくて図々しくて、いつだって前向き。
それがおまえのいいところだって岩ちゃんだってきっとそう言う。

高1の春、ひと目で恋に落ちた君に1年越しのアプローチ。
白鳥沢の推薦を蹴って青城に進んで3年、必死で追いかけたライバルの背中。
いつの間に忘れていたんだろう、あの頃の俺を。

大切なことを思い出させてくれた君。
今でも俺の大事な人。


だから、言うよ。

「ゆいちゃん。俺、バレー諦めないよ。」
君に呆れられて、岩ちゃんにうざがられてさ、だけど笑い合えたら───そう思うから。

「それに、」
ベッドの上から伸ばした手。
今度はちゃんと……ゆいちゃんの手に触れた。

君の体温。
大好きな大好きな君の温度。
だから、

「ゆいちゃんのことも、諦めない。」

「!」
ぎゅうとその手を握り締めて、俺は笑った。
作り笑いなんかしなくたって、今度はうまく笑えてるはず。
だって、君がここにいることが───俺はたまらなく嬉しいんだから。


「大好き、ゆいちゃん。」
好きだよ、大好き、愛してる、ゆいちゃん!
全身全霊全力全開で君が好きだ!

「と、」

「抱き締めたい、キスしたい、もっと触りたい、髪の毛もふもふしたい、エッチしたい、お願い結婚して!ゆいちゃん!」

「───ッ徹!」
大声でまくし立てれば、ゆいちゃんは顔を真っ赤にして……だけど、今度は顔を見合わせて二人で笑った。

「もう、バカ徹。」

「知ってる、よく言われるもん。」

笑って、ゆいちゃん。
俺がたくさん笑わせてあげるから。

俺はさ、君が笑ってくれるのがいいんだ。
君が笑ってくれるなら、俺はどこまでだって闘える。


君を守るためなら、俺はいくらだって強い男になれるんだよ。


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