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■恋の果実 2

授業とバイトが中心の毎日。
バレーボールのサークルには週3で顔を出す。

バレーは好きだけど、部活で続けようとは思わなかった。
高3の春高で完全燃焼したかなって思っていたし、せっかく東京の大学に入ったんだから新しいことにもチャレンジしたい。

そんな大学生活の1年目の終わりが近付いていた。
それなりに充実して、それなりに楽しくて───だけど彼女と出会って、俺の毎日は「それなり」じゃなくなった。

めちゃくちゃ楽しくて、嬉しくて、毎日が眩しいくらいに幸せで……だけど、想った分だけ苦しいこともあるって───俺は知ることになる。


「あ!俺、菅原孝支。ごめん、自己紹介遅れた!」
間の抜けた自己紹介に彼女は笑って、

『三日月ゆいデス、よろしくね。』
とノートの端に走り書きした。

教授の声と同時、ざわつきの納まった教室で───胸の音が高鳴る。

うわ、こういのビビっとくるっていうんじゃね?
なんて考えながら受けた講義はイマイチ頭に入ってこなかった。


驚いたのはその後だ。

「宮城?マジで?!」

「うん、高校の2年間だけどね。」
父親の転勤で2年間宮城に住んでいたことがあると聞かされた時は、正直驚いて……やっぱり運命かも!なんて浮かれた。

青葉城西に通っていたのだと聞いて、懐かしい名前を感慨深く思ったけど……

「俺、烏野だったんだ。」
と言ったそれに、

「えーと……聞いたことあるかも?市街?違う?」
と彼女が返したことで、その話はまもなく終わった。


それから、一緒に昼メシを食べて、連絡先を交換して───毎日ラインして、すぐに電話もするようになった。

食堂で待ち合わせして、学部の連中に冷やかされるのも悪い気はしない。
実際、順調だった。

俺たちの距離は急速に縮まって……
だけど、あと一歩を前にして、二人の関係は歩みを止めた。

「付き合ってください!」
とベタに頭を下げたあの日、戸惑うように瞳を揺らした彼女の───心の内に隠した「本当の理由」。
もし、それを知っていたら……俺は彼女と付き合わなかっただろうか?

自問して、苦しくて───だけど、やっぱり……

「……そんなの無理だよな。」

何度も繰り返した答え。
彼女と出会った時から、きっと決まっていた。

俺は、君に恋をする。
君を好きになって、触れ合って、もっと大好きになって、そしたらもう離せなくて───苦しい日々が訪れたとしても、諦めたくない。
諦めるなんてできない。

どんな時間が待っていたとしても、
何度同じ分かれ道に差し掛かっても───俺は、同じ答えを選ぶ。

そして、言うんだ。

「君が好きだよ、全部好きだ。だから、俺と……。」

「付き合ってください!」って。


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