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□ハッピーレイン,ブルーサンシャイン 1

なんとなく気に食わない、それだけ。


2年に上がったと同時、太一が連れてきた「マネージャー」。
別に今まで一年中心で回してきたんだし、マネージャーなんていらねーだろって思ったし、「東京の野球部でマネージャーをしてました」なんてプロフィールが鼻につく。

毎年募集をかけてはいるが、今年も応募ゼロ。
白鳥沢のバレー部は県内一の強豪で、練習の日程もハードだからやりたがる女子なんかまずいないのが鉄板だった。

『だけど、欲しいよなあ。』
というのは太一とその他同級生たちの意見だが、俺は別にそう思わない。

だけど、本当に探してきやがったよ。
太一おまえさ、その情熱どっか他に向け方がいいんじゃねーの。


4月にやってきた転校生。
親の転勤について東京から来たんだって、三日月は転校初日から結構話題になっていた。

東京からの転校生、可愛いとかなんとかクラスのやつらもわざわざ他所の教室まで覗きに行ってた。
サッカーや野球ではプロも出してる有名なマンモス校で、進学クラスの偏差値はトップクラス、華やかな経歴を引っ提げてやってきた転校生はしばらく話題の的だった。

どの部活に入るのかって、当然本命は前の高校でやってた野球部のマネージャー。
そこを、「白鳥沢って言ったらバレー部だから!とにかく見学きて!」と引っ張ってきたのは三日月と同じクラスの太一で、俄然部員は色めき立った。


『え、私だけなの?』

『そこをなんとか!』

『でも、バレーって全然わからないし。』

『そこをなんとか!』

っておまえら、どこのサラリーマンだよ。

だけど結局──監督と長々話をした後、三日月は入部を決めた。


『一日でも早く皆さんのお役に立てるように頑張ります!』

なんてさ、今日もたいしてお役になんか立ててねーのに体育館の端を駆けまわってる。



「じゃあ、次。一年生はランニングね。あ、涼しいからって水分補給忘れたらダメだよ。」
ノートを抱えてそんな指示を出してから、監督のところへ走っていく。
そんな様子を盗み見た。

三日月に声をかけられるだけで一年なんかは大張り切りで、それがまた鬱陶しい。
別にそんな大したこと言ってねーだろ、なんなんだよ。


それで、練習後。
これがまたイラつく。

太一と二人で「お勉強会」。


「いつもごめんね、川西くん。」

「いいって。そもそも俺が無理言って頼んだんだし。」

「そうだったー、責任とってー。」

なにが「責任とって」だよ。
おい、太一。
おまえもニヤニヤしてんじゃねーよ。

ルールブックやら過去の試合のスコア表やらを持ち出して、二人で図書館に向かうところに出くわして、思わず顔をしかめた。


「おまえ、なんつー顔してんの。」

「別に。」
太一は笑うけど、「なんつー顔」はお前のほうだろ。
最近じゃ昼休みなんかも一緒にいるのをよく見るし、まるで三日月係って感じで二人一緒にいるのをよく見かける。

「あ、そうだ。白布も来いよ、図書館。」

「なんで。」
なんだそれ、俺を当て馬にでもする気かよ。

「なんでって、おまえの方がよくわかることもあるだろ。」
まるでなんの意図もないみたいに太一は言うけど、それが逆に不快指数を煽った。


「俺、勉強あるから。」

「そう?」
視線を合わさずに言った俺には構わずに、太一は三日月の方に向き直る。

「じゃあ、行くか。あ、白布って頭もいいんだよ、一般入試だから、俺らよりずっと……。」

「太一!」

一般入試組、そう言われるのが俺は嫌いだ。
スポーツ推薦で入学した先輩が占めるレギュラーの席、そこに自分は相応しくないって言われてるみたいで。


「ん?なんだよ、白布。」

「……ッなんでもない。」
推薦組の太一にはどうせわからないんだって思って、それきり二人に背を向けた。


「白布ー、今度は付き合えよ。」

なんて太一は言うけど、そんなつもりはない。
そんなことしてる暇なんてないんだ。


それに──やっぱりなんとなくアイツが気に食わない。
そう思ってたんだ。


……最初はさ。


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