□かみさまの箱庭 3
「先輩、またアイスですか。」
「ダヨー。1日一個は絶対食べるから、俺。」
「ちゃんとゴハンも食べた方がいいですよ。」
「はいはい、ゆいチャンてちょっと英太くんみたいだね。」
すごくすごく可愛い「カノジョ」。
だけど、ゆいチャンは可愛いだけじゃなくって、案外口うるさいところがあったりして、それがちょっと可笑しかったりした。
「瀬見先輩って、面倒見良さそうですよね。」
「ちょっとうるさすぎる位だけどね。」
よく見てるねって言ったら、ゆいチャンが顔を赤くした。
「バレー部の応援、してますから。」
え、マジで本当は英太くんが良かった系?なんて思ったけど、
「天童先輩のこと、ずっと見てたんです。格好いいなって。」
耳まで赤くして俯く仕草は、犯罪級!
さすがに俺も、コレには堪えた。
「ゆいチャン、可愛いこと言うんだね。」
「本当のことです……!」
ヤバ、なんかこっちまで照れるじゃん。
なんだよ、コレ。
こんなのって知らない。
「ゆいチャンの審美眼ってどーなってんの?」
本気で押せば若利くんだってオトせそうじゃんって思う。
それくらい可愛い。
顔だけじゃなくて、性格もいい。
だけど、違うんだってゆいチャンは言う。
「ブロックが格好いいです、あんなのって見たことないです。それに、ムードメーカーだなって思ってました、いつも周りを見てますよね。試合が終わると他校生とも仲良くなっちゃうとこも素敵です!」
って、オイオイ。
待って待って、マジで待って。
「俺、そんなんじゃねーから。」
照れる。
これが照れずにいられるか。
「あ、あと……赤い髪も、その……可愛いなって。」
「ッ、マジかよ。」
この子、本当に俺のこと好きなのかな。
これってやっぱ本気ってことかな。
冗談でも冷やかしでもない、まっすぐな視線。
素直に言えば、「嬉しい」。
そう、嬉しかった。
昼休みの学食で、一緒に昼飯を食べる。
「頑張ってください!」なんて言われて、お互い部活に行く。
夜の談話室で届いたLINEを、部の連中に覗かれる。
「だから、付き合ってよかっただろ。」
なぜか俺より嬉しそうな英太くん。
「天童さんの彼女、めちゃくちゃ可愛いですね!」
いつだって素直な工。
「なんか天童さんもちょっと変わったんじゃないスか。」
なんて、太一に言われた。
「そういえば、イケメンオーラが!」
工が目を輝かせて、
「五色も頑張れよ!」
その頭を英太くんが撫でる。
「その前に自分でしょ、英太くん。別れた彼女にLINEは未練たらしいと思うよ。」
「うっ、なんで知ってんだよ!天童!」
「だだのカン─。」
少しずつ変わっていく日常。
俺だけの世界が、俺たちの世界に変わっていく感覚。
別に欲しくないと思ってた。
一人の方がほっとした。
バレーがあればそれでよかった。
そんな毎日が、少しずつ色を変えていった。
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