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□かみさまの箱庭 1

白鳥沢のバレー部は、県内屈指の強豪校だ。
エーススパイカーの若利くんを中心に、選手層も厚い。

とにかく強いし、有名。
その分──まあ、女の子にモテたりもする。


だから、

「て、天童先輩が好きです……!」
顔を真っ赤に染めた女の子に呼び出された時も、なんていうか……妙に冷めた気分になっちゃったんだよね。

基本的に、一番ファンが多いのは若利くんだ。
英太くんなんかもそこそこ人気があるし、賢二郎や太一も女の子に告白されたりしてるみたい。

だけど、俺にはあんまりカンケーない。
たまに差し入れなんか貰ったりするけど、こんな風に女の子に呼び出されたのってはじめてだ。

一応俺もレギュラーだし、バレー部と付き合えるなら誰でもいいってことかなとか。
俺なら競争率低いとか思ってるのかなとか、最悪なにかの罰ゲームかもとか。

なんでそんなことを思ったのかって?


そりゃあそうデショ。
だって、目の前の女の子は──いくらなんでも可愛すぎる。


「う─ん、困ったな。俺、そういうのって考えてないんだヨネ。」
そう告げた俺に、彼女は小さく頷いて、

「あの、お時間ありがとうございました。」
って、それっきり。
フーン、告白ってこんな感じなんだって、なんとなく他人事みたいに思ったりした。



「え、それでフッちゃったのかよ?!」
夕食後の談話室で英太くんに言ったら、やたらと食いつかれた。

「だって、よく知らない子だったし。相手だって同じデショ。」
じゃなきゃ俺に告白なんてしてこないよね?

「可愛すぎて逆に引いたよね、むしろ。」

「おい。なんだよ、それ。つーか相手って誰?何年?」
白鳥沢バレー部に、彼女のいる部員は少ない。
なんといっても練習がキツいし、付き合ってもすぐに別れるのが定番だ。

英太くんも例外じゃなくて、告白してきた女の子とお付き合いをはじめたのにソッコーフラれてた。


「それ、三日月じゃないスか。」
横から口を挟んできたのは、太一。

「2年だったでしょ?」

「ああ、うん。そうだった。」
「よく知らない」と言ったけど、正確に言えば「よく」は知らないだけ。
あの子が誰かってことなら、実は俺も知ってる。


「え、マジかよ!」
英太くんの語気が強くなる。

「チアの子じゃん!」

「可愛いって有名ですよ。」
太一が請け合って、そうなると英太くんはますます身を乗り出した。

「おまえ、マジでフッちゃったの?!信じらんねぇ!」
確かに可愛い子だった。
ちょっといないくらい美人だったし、スタイルも抜群。

白鳥沢はチアリーディング部も全国大会出場レベル。
それに、バレー部の公式戦はブラバンと一緒に同伴が決まり。
だから、俺も知ってる。

三日月ゆいチャン。
うちの2年の中じゃ、なかなかの有名人。


「だったら、英太くんが付き合ってあげなよ。」

「ハァ?!」

「確かに可愛い子だったよ。いかにもモテそうって感じだったし。」

「だったら、いいじゃね─か!」
わかってないな、英太くん。
だけど、そんな英太くんなら彼女ともお似合いかもしれないね。

「バレー部の中じゃ、安パイって思われたんじゃない。俺は、英太くんたちみたいに告られたりしないし。」
強豪チームのレギュラーがカレシ。
おまけに競争率の低い俺なら安パイ、おおかたそんなとこだろうって。


「なんで決めつけるんだよ?」

「うーん、あえて言うなら……勘?」

「なんだよ、勘って。そこはバレーだけにしとけよ!」
他人のことでもこうやって熱くなってくれる英太くんが、俺は好きだ。
だから、彼女も英太くんにしとけばいいのにって思う。


「妖怪っぽい」とかさ、実際今もたまに言われるんだよね。
強豪校のゼッケン背負ってさ、前髪あげて、友達も増えて、だけどやっぱり──俺は、英太くんたちとはちょっと違う。

自分でそう思ってる。


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