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□星なきよるに思うこと 3

「み、宮くんおはよう。」

転校2日目の朝。
先に教室に来ていた私は、隣の席の椅子を引いた彼に声をかけた。


「ん、ああ……おはようさん。」
なんて、気のない返事。
ヤバイ、ヘンなヤツだから関わらないでおこうって思われてたらどうしよう。

とにかく、昨日の態度を謝るのが先!

「あの、さ。」


──昨日、
双子の宮兄弟の片割れ、「宮侑」と通学途中に遭遇した私は、歩きスマホが災いして彼に盛大に悪態をつかれるという難事に見舞われたワケです。

で、教室に来てみれば同じ顔!
思わずニラんだりしてしまったかもしれないのだけど……彼は「侑」じゃなくて兄弟の「治」なんだってことを、放課後になってクラスの女の子たちに教えてもらった。


「昨日、なんかヘンな態度とっちゃったかもで。それで、ゴメン……ね。」
言えた!
とりあえず言えた……!

とりあえず謝れたことにほっとして、だけどまだちょっとドキドキしてる。
だって、あの「宮侑」の態度だもん。
双子の「治」くんだって性格似てるかもしれないじゃん!


だけど、

「そやったっけ?」

「え、」

「別に覚えとらんし、謝らんでええよ。」
なんてさ、双子だって聞いた後なんとなく思った通り、二人の性格はちょっと、いや結構?違うのかもしれない。


「えと、そ……そう?でもさ、昨日、私……侑くんと勘違いしちゃって。」

「なに、侑になんかされた?それで睨んどったん?」

「あ、やっぱり。」
なんだ、やっぱり気づいてたんだ。
それなのに「覚えてない」なんて……移動教室も声かけてくれたし、もしかして「治」くんはいい人なのかも。


ドキン、

なんてさ、ヤバ。
どうなってんの、私の心臓……!
ちょっと節操なすぎだってば。


「そんなに似とう?」

「似てる!よ?……多分。」
だけど、どうしよう。

宮くんと話せるのが嬉しい。
優しいのが嬉しい。

やっぱドキドキする。


「髪色ちゃうやん。」

「え、そだっけ?」

「ハハ、三日月おもろいなぁ。」

(あ、笑った。)
初めて見た宮くんの笑顔に、なんだ転校も悪くないじゃんって思えてくるから不思議だ。


一日目は一人だったお昼ご飯も、その日はクラスの女の子たちと食べた。
何度も開いて閉じてしていたLINEも、休憩できた。

──ずっと気になってたことも、その日は忘れられた。
一日目、なかなかやってこなかった放課後は、その日はすぐに来た。



「あ、部活?」
教科書をスポーツバッグに詰め込む宮くんに、話しかけてみる。
今朝話したきりで、その後は口をきいてなかったからちょこっと勇気を出してみた。

「うん、部活。」

「すごいんだよね、バレー部。みんなから聞いたよ。」
宮くんは兄弟そろってバレー部。
しかも、稲荷崎高校のバレー部は全国大会出場の強豪校で、宮くんたち二人はそのレギュラーらしい。

「すごいかどうかはわからんけど、」
だからか、あの「宮侑」の態度!って今は思う。
二人ともすごく人気があって、県内の他の学校からもファンの女の子が試合を見に来たりするらしいのだ。

東京で通っていた高校には強豪の運動部ってなかったから、それってちょっと新鮮だなって思ってた。
いつか見に行ってみたいなぁなんてことも、思ったりして。


そしたら、さ。

「すごいかどうかはわからんけど、いっぺん練習見に来たらええやん。」

!!

「い、いいの?」

「かまへんよ。」


「え、マジで。そんなこと言ったら今日見に行っちゃうよ。」
そんな言い方されたら、ちょっと調子に乗ってしまう。
「ファンがいる」とか言われたら怖い気もするけど、だったら友達誘って行ってみようかな、なんて。

だけど、宮くんてば斜め上!


「行くで。」

「え!」

「見にくるんやろ。」

「そ、だけど……。」
なに?と首を傾げる彼に、「行く!」と告げれば、そのまま歩き出す。

いやいやいや、一緒に行くってどうなの?
こういうのマズイんじゃないの?
だって、ホラ。

まるで──


「おー、治。」
整理がつかなくなってぐるぐると混乱した思考は、「あの時」の声に遮られた。

体育館の入り口。
宮くんと同じ高さにある明るい髪。

本当だ、髪色違うじゃん。


「なに、女の子連れとるん?めずらし。」
てか、性格も違う。
やっぱ全然違う。

だって、ホラ──


「て、あれぇ?この前の……なに、治にターゲット変えたん?」
こんなこと、宮くんは絶対言わないもん。

むっとして、その顔を見返そうとした私を──宮くんの背中が遮った。


「同じクラス、昨日来た転校生や。」

「ふぅん……。」
宮くんの大きな背中に遮られて、「宮侑」の表情は見えない。


「上、上がっとって。」

「あ、うん。」
見れば、既に結構なギャラリーが体育館の二階に集まっている。


「ありがと、宮くん!」
手を振って背を向けた。


少しの緊張とたくさんのドキドキを抱えながら。
だってもう、ホントに頭が追いつかないことばっかりだよ──。


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