■ルララ 3
靴箱からラブレターなんて、超漫画!
「だけど、漫画級に格好イイから仕方ないよねぇ〜。」
上履きの上に置かれた可愛らしい封筒の数を数えようとしたら、後ろから頭を叩かれた。
「ッたぁ!」
「確かにギャグ漫画だわ、そのマヌケ面。」
上履きを手にしたツンツン頭。
「岩ちゃんヒドイ!上履きで叩くことないのに!」
「ギャグ漫画は承知済みってことか。」
「そっちもヒドイよ!」
ピンク色の封筒で涙を拭う真似をして、
「及川さんならキラッキラの少女漫画のヒーローでしょ!あ、岩ちゃんはスポ根漫画の敵キャラって感じ?ホラ、体育会臭っていうかさ、とりあえずヒーロー感はないっていうか……ッと、同じ手には引っかかりません〜。」
襲ってきた2発目をひらりと回避する。
朝練が終わって教室へ向かう途中の恒例行事。
そんな俺たちのやりとりをまっつんとマッキーが笑って、それで───
「おはよー、及川。今日も元気だね。」
ちょうど登校してきたゆいちゃんに声を掛けられるのも、そう。
「おはよ!ゆいちゃんも今日も可愛いよ!」
「アハハ、超ウケる。」
なんてね。
ちょっと切ないけど、そんな挨拶も毎日のことだ。
「ヒドイなー、岩ちゃんもゆいちゃんも!」
笑いながら上履きを履いて、
「じゃあな、及川。」
「また放課後な。」
「授業中寝るなよー。」
なんてクラスの違うみんなに手を振って、
「ほいほーい、またねぇ!」
ちょっぴり哀れみを含んだみんなの視線を遣り過ごす。
そう、コレも日課。
悲しいことにね。
同級生に下級生、それから他校生にも!はっきりいってモテまくりな俺です。
だけど、悲しいことに本命サンにだけは、そんな俺をスルー。
「ゆいちゃん、今日も一緒に教室行こ!」
「まー、同じクラスだからね。」
そう、スルー。
華麗にね、いっそ清々しいくらいにね!
「うんうん、同じクラスで今日も一緒に勉強頑張ろうね!」
「ていうか及川ってだいたい寝てるじゃん、1時間目とか。」
「えッ、ゆいちゃんてば俺の寝顔に見とれてたり?嬉しいけど、恥ずかしいからやめてー!」
「涎垂れてるって、この前先生言ってたよ。」
「……うッ、うそ?!」
くじけるな、俺。
ボールが落ちるまでゲームは続いてるんだ!
どんなにきついスパイクだって拾い続ければこそ勝機は見えるってもの。
だから俺は今日も必死にレシーブ。
得意のトスも出番なし。
格好良くサービスエース!なんて決められればいいけど、そんな日はまだ遠そうだ……。
可愛いなぁって思ったのは、入学式の時。
さりげなくチェックした可愛い子リストの何番目かにゆいちゃんはいた。
だけど同じクラスになるまで話したことはなくって。
1年と2年の時には彼女ができたり別れたり、それなりに色々なことがあったりした。
だけどさ、3年生。
同じクラスになって、すぐにわー!ってなっちゃったんだよね。
すごく可愛い。
それで、ちょっぴりセクシー。
頬杖ついて窓の外を見てる時とかね、なんていうかドキっとしちゃうんだよね。
クールで辛辣。
だけど賑やか、ほんの少しおっちょこちょい。
そんなアンバランスさに夢中になって、気が付けばお付き合いしてた彼女にポイされてたけど気になんてならない。
見つけちゃったんだもんね、運命の人!
見ててよ、岩ちゃん!マッキー、まっつん!
及川さんはやる時はやる男ですよ!
「あ、ヤベ。」
「なにもー。」
「……宿題忘れた、かも。」
「かもじゃないでしょ、ソレ。」
階段まで50メートル、階段を2階上がって10メートル。
毎朝のデートコース。
「何時間目のヤツ?」
呆れ顔で俺を見るけど、
「うう、古文。」
「もー、しょうがないな。」
なんて、ゆいちゃんは俺に優しい。
「スタバで手を打つか。」
なんてイジワルな笑顔を見せられたら、ますます好きになっちゃうよ。
「奢る!何回でも奢っちゃう!」
「コーヒー一杯で解決しようとしないで、ちゃんと宿題やってね。」
ねぇ、ゆいちゃん。
俺、本気だよ。
簡単に好きって言わないのだって、本気で狙ってるからだよ。
いつかきっと、君のハートにさ。
最高のエースを決めて見せる。
だからさ、ちょっとは覚悟しておいてよね。
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