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■だって、俺が君を見てるから

こういうのって、何て言うんだろう。
気まずいような、だけどちょっとくすぐったいような、ヘンな感じだ。

「こーし!ゴハン、一緒に食べよ。」
教室から呼びかけるゆいに、手を振って応えた。

「じゃあ、影山。そういうことで、このメニュー日向にも伝えといて。」
このところ、影山がよく教室にやってくる。
俺たちは同じポジションだし、セッターという役割上共有することも多い。
だから、影山がココに来るのはそういう事務的な意味合いが大きい。

───んだけど、

「あの、」

「ん?」

「……なんでもないス。」
こういうこと、最近なんか多いんだよな。

『なんだよ、影山―』って、前なら聞いた。
『おまえ、悩みとかあったら言えよ。俺一応先輩なんだからさ』とか、言ってみたこともある。
だけど、今はもう聞くのを止めた。


「菅原さん。」

「おう。」

「これ、日向にも伝えます。」
じゃあ放課後、と向けられた背中。
だけど、教室を通り過ぎる視線が───チラリ、とその奥を覗いて、また廊下へと戻される。

気付いたからって、どうにもできない。
いや、言えるはずがないよな。
だって、そんなのわざわざ言ったら、俺性格悪くないか?


影山が聞いてくれたら、答えられるんだけどな。
なんて、俺ってやっぱり性格悪いのか?

いつからだろう。
影山が向ける視線の先、そこにいるのがゆいだって……気付いてしまった。

ゆいは、俺の彼女だ。


そのゆいを、影山が見てる。
影山は多分、名前も知らない。
だけど、その視線が彼女に向けられていることに───俺は、気付いてしまった。

休み時間の教室、部活へ向かう途中の廊下、練習終わりの体育館。
マジかよって最初は思ったけど、でも多分本当。


なぁ、影山。
もしかして、ゆいのこと気になってる?
まさか好きとかじゃないよな。
だっておまえ、そういうの鈍そうだもんな。

だけどさ、ゆいは俺の彼女なんだって。


いい子だよ、ゆいは。
可愛いし、明るいし、ちょっとイジワル言うこともあるけど素直だしさ。
だけど、おまえに「どうぞ」ってワケにはいかないんだよ。

頼むから自分の気持ちに気付くなよって、思う。
だけど、何か聞いてほしいような気もする。
なんだ、コレ?
ライバル心?優越感?それとも意外と焦ってんのかな、俺。


「あの人、名前なんて言うんですか?」
なんてさ、もしおまえに聞かれたら───俺は、なんて答えよう。


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