道化師の憂鬱








※瞬木視点。後日談話で、ちょっと暴走気味です。







サザナーラとの試合後のアレは正直な所、反則だと思う。いや、俺もわざと皆の前でナマエのことについて話したからだが、だからってもう一度ちゃんとした告白をあの場でさせるのには、驚いた。


「これでお互い隠し事はないわね」

「あぁ、それにしてもお前って…ただのツンデレかと思ってたのに何かお嬢って感じの偉そうって言うか、何て言うか…」

「偉そうなのはアンタの方よ瞬木隼人。何よ、あのセリフ『これからは俺についてこれるように練習に精を出しな!』だっけ?流石、海王学園出身だわ…」

「それ、関係ねーだろ」

「うっさい!とにかく、もうこれで隠し事はないし、お互い素直になりましょう」

「まあ、いいけど」


お嬢でツンデレと思っていたのに、実はツンアホですぐに怒る。その上、良くしゃべる。


「………」


実は、彼女に隠していることが一つだけある。
俺はずっと前からナマエが好きだったし、今更だけど物凄い甘やかしてる。甘やかしてひたすら優しくする。そうして、我が儘何でも聞いてやると、どんどんそれに慣れてしまう。人間慣れって怖いのはこのことだと思う。つまり、ナマエが今我が儘なのは俺がそうさせたからだ。個人的にはそれでいいと思っている。甘やかして俺だけのナマエにしたいってのが本音だ。


「ちょっと隼人!」

「ん、何だよ?」

「ジャージ。汚れてるじゃない。折角洗濯したのに…まあ、いいわ。洗うからジャージ渡して」

「………」


でも、それ以上に誤算があった。
甘やかす以前に何をするにも俺にとってナマエは可愛く見える。もう末期だと思う。だから必要以上に甘えてほしくて、ついついそう言うシチュエーションを作ったりする。けど、たまにこうして世話を焼いてくれる所が凄く好きだ。


「な、何よ?」

「うや、別に。悪かったな」

「…べ、別にジャージは汚れる物よ…それに、それだけ練習しているってことでしょ?」


照れくさそうにしながらも笑いかけてくれる所もまた可愛い。俺にとっては何をやっても可愛いだけなんだけど。だから理性が悲鳴を上げる時がある。問題なのは、それをいつ伝え、恋人同士のやることをどう進めて行くべきか、だ。



20140110執筆
20140617up


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