張り付いた笑顔 前回の彼の策略によって、半ば強制的に恋人同士にされた私は、すこぶる気分…そして機嫌が悪い。だが、イライラしても皆には事情を言える訳もないし、いつもの様にすることにした。明るい笑顔、ヘラヘラとしながら話をしたり…。とにかくいつもの自分になることに集中した。しかし、彼がキャプテンに対して言った一言によって、私のイライラは頂点に達した。 「あ、俺とナマエ付き合ってるんだ」 どうやら、やたら元気に見えた私に対して話を二人でしていたからだろう…。確かに私はキャプテンのことを『憧れ』だとは言った。惹かれているのも事実だ。だが私は、一度も彼と付き合うことを許した覚えはない。しかも話はどんどん大きくなっていて、何だか周りからは、『理想的な恋人同士』としか言われてしまった。今更「嘘です」なんて言えない状況になってしまった。全く、腹が立って仕方がない。 「瞬木くん」 「どうしたのナマエ。あ、俺のことは隼人って呼んで良いって言ったのに…」 「………隼人くん、ちょっといい?」 「あ、うん。いいよ」 爽やかな笑顔を全く崩さずに彼は私と一緒に歩いてくる。周りに人がいないことを確認しながら、私は話を始めた。 「…隼人くん、誰が誰と恋人同士ですって?一体、誰と誰が付き合っているのかしら?詳しい話、教えてほしいのだけど…?」 「あはは。ナマエ、顔が笑ってないよ。勿論、俺とナマエに決まってるじゃないか。昨日だって勝手にしていいって言ってたじゃん。だから勝手にさせてもらったんだよ。それに、誤解されて困る相手はいないんじゃなかったっけ?」 「そんなもの、私は認めてませんから。そもそも、私の呼び捨てにしないでよ」 「なんだ、それで怒ってたの?」 「違う!勝手に恋人同士だと言ったことだ!もう貴方なんて、」 知らない、大嫌いだ!なんて言えない。こんな状況になってしまった以上は「知らない」では通せない。ここは仕方なく、彼に従うしかない。物凄く腹が立つが。 「仕方ないから、皆の前では恋人同士ってことは許すわよ。そでいいでしょ…」 「あぁそれで良いぜ」 急に口調を戻してきたからか、思わずドキッとする。こう言う所が反則だと思う。反則だと思ってしまう私も、きっとどこかで彼の事が好きなのかもしれない。 20140110執筆 20140617up . |